第10レースあたりから降り出した雨が強くなるなか、第36回
エプソムカップのゲートが開いた。
ソウルスターリングが出走を取り消し、出走馬は13頭。馬場状態は稍重のままだった。
サラキアが押し出されるように先頭に立って向正面に入った。
クリストフ・ルメールの
レイエンダが半馬身ほど遅れた外の2番手につけた。
「今日はいいスタートを切って、いいポジションを取ることができた。そのあとは冷静に走っていた。やわらかい馬場を心配していたけど、スローになって、力があった」とルメール。
1馬身差の3番手集団に
ストーンウェア、
ダノンキングダム、そして,1番人気の
ソーグリッタリングがいた。
先頭から最後方まで10馬身もない。1000m通過は1分3秒9。馬場状態を考慮に入れても超スローだ。
4コーナーでほとんどの馬が内を避けて回り、直線に入った。
ラスト400m地点でも
サラキアが先頭をキープしている。
レイエンダはその外に併せて追い出しのタイミングをはかっている。4コーナーでインをショートカットした
ブレスジャーニーも内から押し上げてくる。
ラスト200m付近で、
レイエンダのルメールのアクションが大きくなり、右ステッキで
ゴーサインを出した。ルメールはこう振り返る。
「いい反応だった。速い脚を使ってくれた。この前はよくなかったけど、チークピーシーズで違う馬になった」
レイエンダが力強く伸び切り、重賞初制覇を果たした。
3/4馬身差の2着が
サラキア、1馬身差の3着に
ソーグリッタリングが追い込んできた。
勝ちタイムは1分49秒1と遅かったが、レース自体の上がりは32秒9と速くなった。差のない2番手につけていた
レイエンダに32秒7で上がられたら、後ろの馬にはどうすることもできない。
ミッキースワローや
ダノンキングダムなどは、返し馬のときから走りづらそうにしていた。そうした馬場状態でありながら、3頭がラスト3ハロン32秒台を叩き出す瞬発力勝負になった。
4コーナーから急激にペースアップしたのは、自然にそうなったわけではもちろんない。逃げた
サラキアの
丸山元気と、直後についた
レイエンダのルメールらが、後ろの馬にとってタフな展開を作り出したのだ。
鞍上の要求にきちんと応えてレースを作り、結果を出した
レイエンダの強さは本物だ。超良血が開花した。
(文:島田明宏)