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ペースを落とし他を翻弄したラインカリーナ/関東オークス回顧(斎藤修)

  • 2019年06月13日(木) 18時00分
 デビュー3年目の武藤雅騎手が父の管理馬で重賞初勝利。一気にハナを奪ってペースをコントロールし、後続有力馬を翻弄。見事にレースを支配した。

 ダッシュよく飛び出したのはエリーバラードだったが、大外枠のラインカリーナが内を見ながら一気に先頭へ。これを見て、前走を逃げ切っていたローザノワールがすぐに控えた。そうしたスタート後の先行争いに加え、最初の4コーナーまでにラインカリーナは2番手との差を一気に広げたためハイペースでの逃げにも思えた。しかしそうではなかった。ハロンごとのラップは次の通り。

 6.7- 10.8- 12.3- 14.1- 13.7- 14.3- 14.4- 12.4- 13.0- 13.0- 13.0

 1周目のホームストレッチに入ったあたりで一気にペースを落としている。川崎2100mで、1周目のスタンド前から向正面に入るあたりまで、今回のように14秒前後のラップが続くことはよくあるが、そうなると普通は馬群が一団となって凝縮する。場合によっては、あまりのスローペースを嫌って好位や中団にいた馬が一気にハナを取りにくることもある。

 しかし今回そうならなかったのには2つ理由が考えられる。ひとつは、ラインカリーナ武藤雅騎手が最初の3コーナーまでにハナを取りきっただけでなく、そのまま4コーナー近くまでスピードを落とさず一気に後続との差を広げたため、後続勢に、もしかしてオーバーペースではないかと思わせたこと。もうひとつは、人気の中心マドラスチェックを意識して、他の有力馬が動くに動けなかったこと。

 マドラスチェックの大野騎手はさすがにラインカリーナを楽に行かせすぎたと思ったのだろう。3コーナーあたりで一気にとらえにかかったときの勢いには迫力があった。マドラスチェックと一緒に向正面から位置どりを上げてきたはずのローザノワールは一瞬にして置かれてしまい、懸命に追ったトーセンガーネットも差を縮めることができなかった。

 4コーナーでマドラスチェックに半馬身ほどの差まで迫られたラインカリーナだったが、単騎の逃げでスローに落としたぶんの貯金が十分にあった。あとは相手が来る分だけ前に出ればいい。そのままマドラスチェックを振り切り、2馬身差をつけてのゴールとなった。

 一方のマドラスチェックは3コーナーからずっと追い通し。ダートに転向してここまでの2戦でも長く脚を使えるところを見せていて、今回もその通りの能力を発揮した。しかしラインカリーナは長丁場の道中でかなり息が入る場面があったぶん、余力を残していた。

 若い武藤騎手が、相手の出方を見ながらペース配分などすべて計算して騎乗していたとしたらたいしたものだ。この日までに川崎コースでは12回、それを含めて地方競馬では50回近く騎乗しており、おそらくそうした経験が生かされたことだろう。

 ラインカリーナは前走伏竜Sで3着に負けていたこともあり、人気上位3頭とはやや差があっての4番人気。しかし前走で先着されたのはデアフルーグマスターフェンサーという、この世代のダート路線を代表する存在になるかもしれない相手。そのレベルの高い相手とのレースを経験して、力をつけていたということもあっただろう。

 2馬身差をつけられての2着だったマドラスチェックは相手にうまく乗られたぶんで、能力の高さは見せた。あらためて今後ダート路線での活躍に期待したい。

 2006年のチャームアスリープ以来2頭目の南関東牝馬三冠を狙ったトーセンガーネットにとっては相手が悪かった。中央の2歳から3歳にかけてのダート路線は、一昔前と比べて確実に層が厚くなり、レベルも高くなっている。

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