GI馬6頭が顔を揃えた第60回
宝塚記念のゲートが開いた。
最も早いスタートを切ったのは6番の
スティッフェリオだった。
最内の1番枠を生かして先手を取ると見られていた
キセキは、鞍上の
川田将雅が手綱をしごいてもなかなか進んで行かず、正面スタンド前でようやくハナに立った。
対照的に、抑え切れないほどの手応えでスタートしたのが、
ダミアン・レーンが乗る紅一点の
リスグラシューだった。大外12番枠から出て、徐々に内に切れ込みながら先行馬に取り付き、
キセキに並びかけそうなところまで来て1コーナーに入って行った。
「いいスタートを切って、先頭に行くか悩みましたが、流れから、ここ(2番手)で大丈夫だと判断しました」とレーン。
逃げる
キセキを1馬身半ほど前に見る2番手で折り合いをつけた。馬1頭ぶん外で、キック
バックを受けず、馬場のいいところを走っている。
4コーナーを回りながら
キセキに並びかけ、直線へ。レーンはこう振り返る。
「非常に手応えがよかったので、直線に入ってからは自信がありました」
ラスト200m地点でレーンの右ステッキを入ると、
リスグラシューは、それを合図にさらに末脚を伸ばし、2着の
キセキを3馬身突き放した。
勝ちタイムは2分10秒8。
圧勝と言っていい内容で、史上4頭目の牝馬の
宝塚記念優勝馬となった。
道中、先頭を行くラ
イバルを終始射程に入れて走り、ラスト3ハロンをメンバー最速、それも2番目の馬(
スワーヴリチャード)よりコンマ5秒も早い35秒2でまとめてしまうのだから、後ろの馬はたまらない。
キセキも、ラスト3ハロンでメンバー中3番目の35秒8の末脚を使えるペースで逃げたのだから、戦術としては正しかったと言えよう。
先述したように、
キセキは、促されてようやく単騎逃げの形に持ち込んで1コーナーに入ったが、
リスグラシューは引っ張り気味の手応えで楽に並びかけた。そのあたりも、最後の伸び脚の違いにつながったように思われた。
(文:島田明宏)