「
宝塚記念・G1」(23日、阪神)
令和最初のドリームレースを制したのは、3番人気に推された紅一点
リスグラシュー。この春、旋風を巻き起こした
ダミアン・レーン騎手(25)=豪州=の手綱がさえ渡り、2番手追走から直線鮮やかに抜け出して、史上4頭目の牝馬Vを決めた。これで昨年の
エリザベス女王杯に続き、2つ目のG1タイトルを奪取。今後は海外遠征を視野にさらなる飛躍を目指す。1番人気の
キセキが2着、6番人気の
スワーヴリチャードが3着に入った。
最後もレーンが“マジック”を魅せた。大外から好発を決めた
リスグラシューが、最内から主張した
キセキのハナを叩きに行く。1角でギアを下げ、ハナは譲ったものの、「まさか、誰も2番手に行くとは思わなかったと思う」と矢作師も驚く大胆騎乗。結果、このポジショニングが勝負の分かれ目となった。
前半5Fの通過が60秒ジャスト。直線は前を行く
キセキを上回る手応えで先頭へ。後続の蹄音も聞こえぬまま“紅一点”が強豪牡馬を力でねじ伏せ、圧勝劇を演じた。殊勲の鞍上は「非常にいいスタートを切ったので先頭に行くか迷いましたが、ペースや展開を考えて(2番手と)判断。直線は
キセキを見ながら。最後の100メートルぐらいで勝利を確信しました」と会心の騎乗に笑みを浮かべた。
矢作師は
グランプリ初制覇。「初制覇というよりも、出走するのが初めて。ファン投票というレースに自分は重みを感じる調教師。うれしいですね」。通算7度目のG1制覇は格別の喜びだ。「調教師としてというよりも、競馬を見ている一人として感動しました」と声を詰まらせた。
5歳夏に2つ目のG1タイトルを奪取。香港遠征が女王を強くした。師が力説する。「2回経験したことで、馬が非常に力強くなっていましたね。よく“海外帰りは良くない”と言われるけど、逆に糧になっていると思いました」。メンタル面の強化がパフォーマンスの質を大きく上げた。
今後は3度目の海外挑戦を見据える。「BCフィリー&メアターフ(米G1・11月2日・サンタ
アニタ)を考えていたけど、この強さを見たら
BCターフでもいいかな。あと、
コックスプレート(豪G1・10月26日・
ムーニーバレー)の招待も来ている。いずれにしても海外に挑戦すると思います」と力強く宣言した。
約2カ月間で37勝を挙げたレーンだが、JRAでの短期免許騎乗はこれでひと区切り。「本当に素晴らしい時間を過ごすことができてうれしい。日本が大好きになりました」。最後は日本語でファンへ向けて「
アリガトウゴザイマス。マタキマス!」。強烈なインパクトを残した豪州の若武者が、鮮やかに上半期を締めくくった。
提供:デイリースポーツ