馬体重の変動が大きい馬が目立ったが、
チュウワウィザードは前回の
平安Sがこれまでの最高馬体重で、12kg減の470kgなら輸送も含めてむしろギリギリに仕上がっているように見えた。
オメガパフュームの14kg減も
平安Sで増えていたぶんを戻しただけで、448kgは昨年末に制した
東京大賞典とぴったり同じ。
サウンドトゥルーも冬の間に増えていた馬体がようやく絞れた。一方、
アポロケンタッキーの15kg増578kgはさすがに太かった。
それにしても
ダミアン・レーン騎手のペース判断というか肝の据わった騎乗はすばらしい。
オメガパフュームには初騎乗で、本番前に2レースの騎乗を確保したとはいえ、
大井競馬場どころか
地方競馬での騎乗もこの日が初めて。たしかに先行勢は速いペースだったが、あの縦長で後方2番手。3コーナーに向けて馬群が徐々に凝縮したが、それでもまだ後方。3コーナーを回って残り600mの標識から徐々に位置取りを上げていった。レースの上り3Fが38秒0、直線先頭に立って2着だった
チュウワウィザードが37秒7に対し、
オメガパフュームは36秒7。前半溜めていた脚を最後の600mで爆発させ、ラ
イバルを力でねじ伏せた。
オメガパフュームは常に持てる力を発揮するわけではなく、ここ一番で
ピークの能力を発揮するタイプ。馬体重12kg増で斤量59kgの
平安Sは、やはりここへ向けてのひと叩きと見てよかった。おそらくマイルでは距離不足で、脚質的にも大井2000mという舞台が合っているのだろう。直線末脚勝負といっても、全盛時の
サウンドトゥルーや
ノンコノユメのように追い込み一辺倒ではなく、ある程度自在に立ち回れるのも強みといえる。
この日は晴れたが、日曜から月曜にかけて降った雨の影響が残っての重馬場で、勝ちタイムは2分4秒4。
帝王賞は2017年以降の3年間はいずれも2分4秒台前半の決着。2016年末の
東京大賞典以降の大井2000mのGI/JpnIは、2017年の
JBCクラシックや3歳の
ジャパンダートダービーも含めて勝ちタイムは2分4秒台から5秒台。今の大井の馬場なら、極端な不良馬場にでもならない限り、最強クラスの対決は2分4秒台での争いとなっている。
先行勢には厳しいペースだったが、1000m通過61秒2というのは、同じく
オメガパフュームが勝った昨年末の
東京大賞典の前半1000mとまったく同じ。
東京大賞典が良馬場2分5秒9の決着で、今回が重馬場で2分4秒4。
東京大賞典では、逃げた北海道の
スーパーステションが直線半ばまで先頭で6着と見せ場をつくったが、今回は3番手を追走して3コーナー過ぎで一杯になって11着。
東京大賞典より時計の出やすい馬場だったことを考えると、ペース的には今回のほうが楽だったはずだが、そうはならないのが、単純な時計比較ではない競馬の難しいところ。
スタート後、内に切れ込みながら
インティが先頭に立ち、
スーパーステションが2番手で落ち着いたかに思えた。しかし外枠から迷わず
ビュンビュンと飛ばしていったのが
シュテルングランツだった。
インティは、出遅れた
かしわ記念はともかく、それまではほとんどがマイペースの逃げ。
スーパーステションは地元門別ではそもそもの能力の違いから必然的に逃げとなっていた。両馬とも、捨て身覚悟の伏兵を追いかける形となり、完全にリズムを崩されてしまった。
特に力んで走っているように見えたのが
インティで、直線を向いて
シュテルングランツが失速したところで先頭に立ったものの、その後は後続有力勢に飲み込まれてしまった。距離が長かったという見方もできなくもないが、むしろマイペースで運べなかったことのほうが大きいように思う。もしかして地方のダートより比較的軽い中央のダート向きという可能性もある。
それら3頭を前に見て、完璧に折り合ったのが
チュウワウィザードだった。3コーナーで前の
スーパーステションの手応えが鈍ったと見ると外に持ち出し、無理しないまま前をとらえにかかった。そして直線、残り200mで先頭に立つという完璧な勝ちパターン。しかし今回ばかりは
オメガパフュームの決め手のほうが勝っていた。2強が不在だったとはいえ初めてのJpnI挑戦。これを経験しての秋に期待だ。
大井移籍初戦の
ノンコノユメが、昨年の
フェブラリーSを勝って以来、久々の好走を見せた。最近はゲート内で
テンションが高く出遅れることが多かったが、今回は大外枠でゲートの中で待たされなかったのがよかったのか、互角のスタートを切って楽に中団につけた。直線を向いたところからは
オメガパフュームに引っ張られるように伸び、
チュウワウィザードにアタマ差まで迫ったところがゴール。スタートがまともなら、あらためて能力の高さを見せた。