GIを勝った3歳馬が秋のGIで賞金除外の憂き目に--。そんな“まさかの事態”を考える陣営は普通いないだろうが、ダート路線は別だ。出走したいレースに出走できない。そんな状況もあり得る。いや、その可能性は決して低くはない。
「この馬の距離適性を考えたとき、下半期の最大目標はチャンピオンズCになると思うんだけど、その前に
JBCクラシックにも挑戦したい気持ちがある。大きい馬でスタート後のスピードの乗りも悪いけど、園田(兵庫CS)の小回りを上手に走ってくれたことで、地方のコースがマイナスにならないことがわかったから」(音無調教師)
トレーナーが語る“この馬”とは、次週の
ジャパンダートダービー(10日=大井ダ2000メートル)に出走する
クリソベリル。冒頭の“まさかの事態”もJDダービーを勝つことが前提になっているわけだが、ここまでの3戦3勝全てがワンサイド。しかも、その3戦は総じて「太め残りの状態だった」と言うのだから、来週の大一番もおそらくは大丈夫。層が厚いと噂の3歳ダート路線でも個人的には“抜けた存在”だと思っている。多少は馬体が絞れ、これまで以上の仕上がりで出走できるとなれば、JDダービー以降のローテーションを陣営が考えだすのも無理からぬところだ。
そうなると、今年のJBCが
浦和競馬場で行われることがポイントになってくる。現在、浦和の2000メートルは11頭でフルゲート。スタート地点の幅員を広くし、JBC当日は12頭の出走が可能になる…なんて話も聞くが、いずれにしろ
JRA所属馬の出走枠は例年ほど多くはなく、京都競馬場の開催で13頭も出走できた昨年のような状況は望むべくもない。
その狭き門に、多額の本賞金を持っている古馬のトップクラスが数多く出走を表明した場合、3歳王者になるはずの
クリソベリルまで順番が回ってこないのではないか?
音無調教師はそこを心配しているのだ。
「仮にJDダービーを勝つことができれば、
クリソベリルは4戦4勝で、GIを含む重賞2勝。3歳馬の戦績としてはこれ以上ないほどなんだけど、それでも古馬の上位陣が持っている金額にはおそらく届かない。“
日本テレビ盃を使えばいいじゃないか”という声もあるだろうが、そのレースさえも賞金面の問題で確実じゃないからね。ダート路線の3歳馬は他馬の動向によって、日程を左右されてしまう部分があまりにも大き過ぎる気がするな」
地方競馬、そして軽種馬生産の振興を目指すJBCの理念を考えれば、持ち回りでの開催に不満の声を上げるのはおかしなこと。むしろ関東競馬場で唯一、JBC未開催だった長い歴史を持つ小さな競馬場が生むドラマに記者は期待している。今回の問題はそこではないのだ。
JRAの3歳限定ダート重賞は
ユニコーンS、
レパードSのGIII2つしかなく、GI扱いのレースも地方のJpnI
ジャパンダートダービーのみ。芝を走る馬と比較して、賞金加算が圧倒的に難しい。これこそが根本の問題。
3歳の統一チャンピオンはJDダービーの勝ち馬。そして競馬の醍醐味である異世代対決の最たるものが「3歳VS古馬」。ならば多少の優遇策はあってもいいと思うのだが…。この話題が再燃するような圧倒的な走りを
クリソベリルには期待している。
(栗東の本紙野郎・松浪大樹)
東京スポーツ