「今思えば、降級制度ってすごいシステムだったよな」
高橋亮調教師がしみじみとした様子でそう口を開いた。例えば今年6月の
エプソムCでは、昨年までなら3勝クラスに降級していた
レイエンダが快勝し、2勝クラスに下がっていたはずの
サラキアが2着に。
「重賞でも勝ち負けするような馬が、去年までなら条件クラスに下がっていたんだから…。そりゃあ、力が違うって。ウチの馬も下がってほしかったわ(笑い)」
ウチの馬とは
スマハマのことだ。現在の収得賞金は1900万円。昨年までであれば、
サラキアと一緒に2階級降級していた。今年の
東海Sでは8か月のブランクがありながら、次走で
フェブラリーSをも制する
インティを番手で追走し、3着に粘った実力馬が、昨年までなら2勝クラスで走れていたというのだから、確かに降級はいろんな意味ですごい制度だったのかもしれない。
現実に戻れば、降級制度がなくなったせいで?
スマハマには“災難”が降りかかっている。オープン馬としては最低限の賞金しかないため、計画的な出走がしづらいのだ。こうなったときに頼らざるを得ないのが除外の権利の獲得なのだが…。
「今は重賞では権利が取れないからね。前に東京のオープン(
アハルテケS)に登録したんだけど、フルゲート割れしたので(投票できず)権利がもらえなかった」
苦肉の策として、先週は函館の
マリーンSにも特別登録していたというのだから陣営の苦労がしのばれる。最終的には当初から目標としていた日曜(14日)中京の
名鉄杯(ダート1800メートル)がフルゲートに満たない13頭で収まったため、除外の優先権がなくとも問題なく出走できる運びに。となれば、やるべきことはただひとつ。勝って賞金を加算する。これだけだ。
「
東海Sは長く休んだ後だったので、結果うんぬんより、無事に走れればいいと思っていたんだけどね。あれだけ頑張ってくれた。その前の青竜Sだって、他馬より重い57キロを背負っての2着。力があるのは確かだよね」
青竜Sを勝ったのは今や古馬ダート戦線のトップクラスで戦うグリム。これに1キロ増しでアタマ差肉薄し、後の
東京大賞典&
帝王賞勝ち馬
オメガパフュームを3着に退けた。この内容だけを見ても、
スマハマがダート界の頂点を狙える素材であることは十分に分かる。
「今後のためにも、なんとか賞金を加算しておきたい」と
高橋亮調教師。秋のGI戦線に賞金ラインを心配せずに堂々と参加するためにも、まずは今週の
名鉄杯で力の違いを見せつけておきたいところだ。
(栗東の坂路野郎・高岡功)
東京スポーツ