来年、もしくは再来年のPOG取材に生かせれば――と思いながら今年もセレクトセール(セレクトセール2019=主催・日本競走馬協会)に来ているが、今回は少しばかり“異常”。その表現が適切でないとするなら、予想をはるかに超える“盛況”と言い換えたい。
これまではハンマーを落とすタイミングを無駄に引っ張る瞬間があったものだが、今回はそれが全くない。単純に金額が高いだけでなく、これまで以上に競り合いが激しい。ゆえに金額も
ポンポンと上がっていく。そんな印象。当然ながら時間も押し、セールの終了は予想をはるかに超える19時20分。テレビの放送枠に入りきらなかったと聞く。盛況なセールは同時に疲れるセールでもあったわけだ。
先鞭を付けたのは1億2000万円で落札された
ルモスティの18(牡=父
ドゥラメンテ)。「あれが今回のセールの流れを作りましたね。(上場番号1番に)いい馬を置くのはいつもやっていることですが、今年は下見の段階から多くの方が訪れていたので、いい馬を意識的に前のほうに入れていたんです」とは吉田勝己ノーザン
ファーム代表。落札率92.9%(ちなみにノーザン
ファームの生産馬は100%)は作戦勝ちと言えるが、予想していた以上に新規参戦のバイヤーが強気の購入をしたこともあったのではないか?
実際、セレクトセールの“顔”ともいえる里見治氏は「今年からセールに参加した方々が激しく競ってきて、高い値段で馬を買っていく。思っていた以上に高額だったという印象が強いですね」と口にした。
これまでは落札番号を聞いただけで「誰が落としたのか?」の想像がついたものだが、今年は「誰が落としたの?」と確認し合うことも少なくなかった。新規参入で高額馬を買っていく“次代の巨星”が盛況なセレクトセールを作った立役者と言えるだろうか。
里見氏自身は今年も2頭の
ミリオンホースを含む3頭を落札。例年よりも明らかに少ない頭数になったのは「可能性の低そうな馬を買わず、数を絞って勝負した。みなさんが下りずに競ってくるので、どうしても欲しいと思っていた馬に集中的にいかざるを得なかった」
その内訳は
ベルワトリングの18の2億5000万円を筆頭に、
ダンサーデスティネイションの18(牡=
父ディープインパクト)が1億6000万円、
ファイナルディシジョンの18(牡=父
Into Mischief)が8000万円。セールの顔の買い方こそが新時代のセレクトセールの在り方なのかもしれない。つまりは「集中投下」で勝負を決める戦い方だ。
一方、新規参入で注目された三木正浩氏(ABCマート最高顧問)は、1億2500万円の
シャンドランジュの18(牝=父
ロードカナロア)を筆頭に3頭を落札した。
「1頭目からものすごく高くて帰ろうかと思った(苦笑)」は謙遜だろうが、初陣としてのインパクトは十分なもの。複数の
ミリオンホースを落札した杉野公彦氏とともに、将来のセレクトセールの顔となっていくかもしれない。いずれにしろ、セレクトセールの巨大化は今後も止まらない。それだけは間違いないだろう。
東京スポーツ