2019年7月30日、史上2頭目の無敗の三冠馬・
ディープインパクトが17歳でこの世を去った。現役時代はすべての国内レースで上がり最速をマークする圧倒的な末脚を武器に通算14戦12勝という成績を残し、GI勝利は「7」を数えた。また、種牡馬としてもその強さを産駒に伝え、5頭のダービー馬をはじめ多くのGIホースの父となり、既に産駒の
JRA・GI勝利数は「51」。現役時代と同様に、日本競馬界を牽引してきた。
今回はこの稀代の名馬への追悼企画として、新馬戦からラストランとなった
有馬記念まで、
ディープインパクトの現役時代全14戦を改めて振り返る。
■記念すべき第50回で160,297票を集める
菊花賞を制し、
シンボリルドルフ以来となる21年ぶりの無敗の三冠を達成した
ディープインパクト。残る年内の出走は
グランプリ・
有馬記念のみとなった。ファン投票では160,297票を獲得し堂々の1位。この得票数は今でも21世紀の
有馬記念ファン投票において最大の票数となっている。
この年の
有馬記念には前年覇者・
ゼンノロブロイ、ステイヤーズS勝利から臨むO.ペリエ騎手騎乗の
デルタブルース、日本レコードとなった前走の
ジャパンCで同タイムの2着に入った
ハーツクライ、GI・2勝馬
タップダンスシチーらが出走。ただ1頭出走する3歳馬の
ディープインパクトと歴戦の古馬との対決という構図になっていた。
それでも
ディープインパクトの単勝オッズは「1.3倍」。古馬と初対決となってもこれまでと変わらず、ほとんどのファンが
ディープインパクトの勝利を信じていた。
16万人を超える観衆の中、第50回
有馬記念のゲートが開いた。大方の予想通り、逃げたのは
タップダンスシチー。数馬身ほど2番手以降を離して飛ばしていく。
ディープインパクトはスタート直後こそ最後方に位置していたが、徐々に押し上げ向正面ではやや中団に。
ゼンノロブロイはいつも通り中団、
デルタブルースも同じような位置に。いつもと違ったのは、前走の
ジャパンCをはじめ末脚に懸ける競馬で実績を積んできた
ハーツクライが好位で進めていることだ。
第3コーナーから
ディープインパクトは加速していく。大外を周り、直線入り口では前を射程圏内に入れたように見え、そこから伸びてはいるものの、先に抜け出した
C.ルメール騎手騎乗の
ハーツクライを交わしきれない。最終的に半馬身及ばず、
ディープインパクトは競走生活で初の黒星を喫し、中山競馬場はファンの悲鳴、どよめきに包まれた。勝ちタイムは2分31秒9(良)だった。
優勝馬
ハーツクライは翌年、
ドバイシーマクラシックを4馬身差圧勝、
キングジョージ6世&クイーンエリザベス
ダイヤモンドSで3着と世界の舞台で躍動。
ディープインパクトを破ったその実力が本物であることを証明した。