門別1800mのゴール直前、迫り来る2着馬の蹄音。「踏ん張ってくれ」。鞍上・
五十嵐冬樹騎手の願いは何とか通じ、逃げ粘る二冠馬
リンゾウチャネル(牡3・
堂山芳則厩舎、父
モンテロッソ)が、
シベリアンプラウド(牡3・
田中淳司厩舎、父
トーセンホマレボシ)の猛追をクビ差振り切り、「第40回
王冠賞H2」を制した瞬間、ホッカイドウ競馬史上5頭目、2010年に牝馬で初めて達成した
クラキンコ(
堂山芳則厩舎、
父クラキングオー)以来9年ぶりとなる「三冠馬」が誕生したーー。
管理する
堂山芳則師は、2001年
ミヤマエンデバー(牡、
父ダミスター)と合わせ、何と3頭目の三冠馬トレーナーに。ホッカイドウ競馬デビューの“生え抜き”では史上初めての「2000勝ジョッキー」鞍上・
五十嵐冬樹騎手も、ついに「三冠ジョッキー」の称号を手に入れた。
さらに、
リンゾウチャネルは、2016年度からホッカイドウ競馬が制定している「3歳馬三冠褒賞金」の初受賞馬となり、木谷ツヤ オーナーに2000万円が贈られた。同報奨金に関しては、創設された2016年に
スティールキングが、翌2017年に岩手
ベンテンコゾウが王手を掛けてこの
王冠賞H2に挑んだのが、それぞれ
ジャストフォファン、
スーパーステション(いずれも鞍上は
阿部龍騎手)に達成を阻まれ、贈呈が持ち越しとなっていた。4年目にして遂に受賞馬が現れ、全国の馬主層等への大きなアピールともなりそうだ。
本題に戻ろう。
3歳となった今季、
リンゾウチャネルはオープニングデー4月17日の初戦からすべて余裕残しの快勝で4連勝。一冠め・
北斗盃H2は2着馬に3馬身、二冠め・
北海優駿(ダービー)H1でも同じく3馬身差で完勝し、レース後、堂山師が「一番心配していたのは内回り(1600m)の
北斗盃。そこをクリアしてくれて、今夜(
北海優駿)はそれほど心配せずに見ていられた。今回2000mで、次(
王冠賞)は1800mだからね。相手関係もそんなに変わらないなら、何とかなるでしょう」との見立てを披露してくれるほど、圧倒的な能力差を見せての「二冠」達成だった。
ところが、その先に「試練」が待っていた。
細かくは語ってもらえなかったものの、堂山師によると、実は
北海優駿(ダービー)前から幾らか脚元を気にしながらの調整だったとのこと。そしてダービー後。この中間は「寝違えだとか色々とアク
シデントも重なってしまって」周回コースで強めの負荷を掛ける厩舎本来の調教パターンを採れず、やむを得ず日々坂路で攻め馬を重ねる選択をしたそう。その坂路での追い切りも、
北海優駿(ダービー)直前の6月16日には11秒8-11秒7-13秒1(3F=36秒6)で駆け上がっていたのが、今回
王冠賞直前の7月28日は13秒1-12秒3-13秒0(同38秒4)どまりだった。
比べれば、その違いは明白。三冠達成後に堂山師が「使えないかも、と思うこともあった」と話し、優勝騎手インタビューで
五十嵐冬樹騎手が「二冠の疲れもあったみたいで、よくこの状態で、本当に三冠獲ってくれたと思って…」と男泣きするほど、関係者全員がダービー以降、苦心を重ねての快挙達成だったのである。
この
王冠賞H2は、
地方競馬全国協会(NAR)が企画する「3歳秋の
チャンピオンシップ」開幕戦。今年からJBC競走への参戦を促す狙いも込め、昨年までの11月下旬から今年は10月6日(日)に前倒しされた岩手競馬「ダービー
グランプリM1」で更なる「褒賞金」獲得も狙える権利を掴んだが、堂山師は、何とか試練を乗り越えてくれた
リンゾウチャネルにまずは英気を養ってもらうことを即決。回復度合いによっては、相手関係も見ながらダービー
グランプリに挑む可能性もあるが、決しては無理はさせず、地元戦をひと叩きして園田の楠賞(11月14日)あたりを目指す考えもあるという。
猛暑下での続戦を避け、夏場を全休することで、秋には更に「速くて強い」魅力を増した
リンゾウチャネルの走りがみられるのではないか。戦列復帰の時を、今から楽しみに待ちたい。
※なお、今週の門別
グランシャリオナイター開催は、きょう6日から3日間の予定です。今週も、馬産地ナイター競馬をお楽しみ下さい!
(文=ひだか応援隊)