ゲートが開くと、3番の
ドリームキラリが出鞭を受けてハナを切った。大外14番の
リアンヴェリテが内に切れ込みながら並びかけ、少し遅れて並走する形で1コーナーへと入って行く。
芝ではほとんどのレースで先手を取ってきた初ダートの
マルターズアポジーが差のない3番手。同じく初ダートの
タイムフライヤーがつづく。
馬群は15馬身ほどの縦長になった。ターフビジョンに1000m通過タイムが58.5秒と掲示されると場内がどよめいた。
明らかにハイペースなのだが、前がなかなか止まらない。4コーナーで
リアンヴェリテが先頭に立って直線へ。外から
タイムフライヤーがかわしにかかる。
これらの外に、藤岡康太の
モズアトラクションが並びかけてきた。ラスト100mあたりで突き抜け、2着に1馬身半差をつけてフィニッシュした。
「状態がすごくよかった。 (2着だった)前走で確認したことを踏まえて、前に強い馬がいたので、何とかつかまえようとしました。リズムがよかったし、流れが速く、この馬にとっていい展開でした。3コーナーから追い上げる脚もよかったです」
これがコンビ4戦連続4戦目となった藤岡はそう振り返る。
対照的に、速い流れに戸惑ったような走りになったのは、1番人気に支持されながら7着に終わった
武豊のグリムだった。
「感じはよかった。今までと違う形になってしまいましたね。こういう速い流れにも対応してくれると思っていたんですけど、4コーナーで初めて手応えがなくなりました。自信があっただけに残念です」と武。
4着
レッドアトゥの
福永祐一は「相手を間違えた。グリムが相手だと思ったので、そのぶん外を回ってしまった」と顔をしかめた。
モズアトラクションの勝ちタイムは1分41秒9。初勝利まで12戦を要した「苦労馬」が、初めての重賞タイトルを手中にした。
展開に味方されたとはいえ、自分から動いて勝ち切った内容は素晴らしかった。秋のGI戦線に、また楽しみな新星が現れた。
(文:島田明宏)