24、25日に「
ワールドオールスタージョッキーズ(WASJ)」が開催される札幌競馬場。21日は出場予定のルメール、
川田将雅、
浜中俊、
三浦皇成、藤田菜七子らが調教に姿を見せ、華やかな雰囲気に包まれた。
ルメールが「勝ち負けは馬によりますね(笑い)」と言う通り、騎乗馬が決まっていない段階で話を聞いたが、前身のWSJSで優勝経験がある浜中は「ファンの見方も普段のレースとは違いますし、我々の気持ちも違ってきますよね」と特別なレースであることを強調。初参戦となる“世界一の女性ジョッキー”藤田菜七子も「素晴らしいジョッキーの皆さんと、ご一緒できるのは本当に光栄です」と感激の面持ちだった。
そんな華やかな場面に遭遇しているとき、栗東トレセンで話を聞いた、ある男のことをふと思い出してしまった。今年3月にデビューした“35歳の新人ジョッキー”藤井勘一郎だ。15歳で単身
オーストラリアに渡り、現地の騎手免許を取得した後、世界13か国で騎乗。昨年、
JRA騎手試験に合格した異色の経歴を持つ。
「外国人騎手が“日本の競馬は素晴らしい”とよく言ってますが、騎手にとって競馬に集中できる環境が整ってますよね。海外ではとてもそうはいかない。トレーニング施設は自分で見つけなければならないし、移動も仲間のジョッキーと長時間乗り合わせて…なんてことはザラですよ」
藤井が口にしたのは、まるでMLBを目指すマイ
ナーリーガーのような話だが、「その時の経験が生きている部分もありますけど…。車の運転と似ていて、その国々によって競馬のやり方も違うので」と海外経験を必要以上に誇る様子はない。むしろ「最高の環境でやらせてもらい、自分が新しく生まれ変わっていく感じがしています」と今、
JRAの舞台で走れることを心の底から楽しんでいる。
「最高の環境でやらせてもらっているがゆえに、最高のクオリティーが求められるのが
JRAジョッキーの宿命」と語る藤井はまさに24時間365日競馬漬けの日々。そんな彼の
ヘルメットカバーには「My Aim is for GradeI Success in
Japan T&M(私の目標は日本でGIタイトルを取ることです テリー&マーガレットへ)」と刻まれている。
テリー&マーガレットとは、藤井が「自分の原点」という
オーストラリア時代に世話になった調教師夫妻の名前。この言葉を見て日々自分を奮い立たせている彼が、一日も早くGIジョッキーとなり、WASJの舞台に立つことを願わずにはいられない。そしてその姿を取材する自分の姿を肌寒い札幌競馬場で想像している。
(北海道出張満喫野郎・鈴木邦宏)
東京スポーツ