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3歳牝馬ディアンドル 歴戦古馬の鼻明かす/トレセン発秘話

東京スポーツ
  • 2019年09月25日(水) 20時39分
 秋のGIシリーズがいよいよ開幕。オープニングは第53回スプリンターズS(29日=中山芝外1200メートル)だ。春の王者ミスターメロディセントウルSで8着に敗れ、マイルGI馬2頭(グランアレグリアステルヴィオ)の回避で混迷ムード漂う短距離王決定戦。そんな時こそ、最前線取材で「激熱ネタ」を仕入れてくるトレセン発(秘)話=高岡功記者の出番。ディアンドルが歴戦の古馬を一刀両断する――。その根拠をとくとお読みいただきたい。

 競馬記者になったばかりのころ、先輩のT記者から「ただ話を聞くだけじゃなくて、対象者の性格まで把握して言葉を読み取り、紙面に生かさないといけない」ということを口酸っぱく教えられた。同じ言葉でも人が違えば重みも変わってくるということ。例えば、かつて強気なコメントばかりでこの世界では有名人だった加藤敬二厩舎・夏村洋一助手の「かかってこんかい」と、いつも“泣いて”ばかりいた坂田正行調教師の「かかってこんかい」(まあ、こんな言葉を言うことはなかったが)では意味合いがまったく違うということだ。

 さて、スプリンターズSディアンドルを出走させる奥村豊厩舎の小屋敷昭助手がやけに色気を持っている。以前は白井寿昭厩舎で助手として多くの重賞ウイナーの調教をつけてきた仕事人が「めったにないくらいの素質を持っている。メイショウボーラーぐらいの手応えはあるよ」と話す。

 メイショウボーラーといえば、デビューから重賞2勝を含む4連勝。朝日杯FS(03年)、スプリンターズS(06年)で2着した実力馬で、ダートでは頂点(フェブラリーS=05年)に立ったほど。その馬と同じくらいの感触があるというのだから聞き捨てならない。

 おぼろげながら、白井厩舎時代にそこまで強気だったという印象はないし、白井元調教師に聞いても「大風呂敷を広げておおげさな話をするような男ではなかったよ」と。そんな人の言葉だけに重みがある。失礼ながらN助手の言葉とは“重量感”が違うのだ。

 そこまで小屋敷助手が前向きになるのも、確たる理由がある。ひとつはデビューからここまで「目一杯に仕上げたことは一度もなかった」という調整過程だ。ここ3走だけ見ても最終追い切りはすべて栗東坂路で4ハロン56秒台という軽めの調教。それでいてリステッド〜重賞で1・1・2着という成績を残している。「今回はGIだし、きっちり仕上げていくと思う」とあれば、さらにワンランク上の走りが期待できる。

 もうひとつは前走の北九州記念(2着)で見せた対応力。7歳アレスバローズ、3歳イベリスの2頭を出走させる角田調教師が、3歳馬が古馬混合の重賞で慣れるまで苦労する理由についてこう話す。

「流れそのものが違う。そこに戸惑ってついて行けないことが多い。そこをいきなり乗り越えていくような馬は本物」

 まさにディアンドルの前走は“本物”だった。それまで体感した最速の前半3ハロンラップを0秒8も上回る32秒7の激流にも戸惑うことなく、出遅れながら難なく好位を追走し、直線はしっかりと伸びてきた。まさに古馬の壁を乗り越える大器と言える。

 前走で出遅れたことを踏まえて、この中間は初めてゲートに縛ることを実行した。「当初は嫌がっていたけど、3回目には納得していた。今度はゲートも大丈夫だと思う」と小屋敷助手。まさにGIに向けて勝負手を打ってきている。メイチの仕上げでメイチに走った時、一気にスプリント戦線の勢力図を塗り替えてしまうのか…。“メイショウボーラー級”なら成し遂げてしまうだろう。

(栗東の坂路野郎・高岡功)

東京スポーツ

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