秋GI戦線の皮切りとなる第53回
スプリンターズステークスのゲートが開いた。
大方の予想どおり、
松若風馬の
モズスーパーフレアがハナに立った。
「返し馬の雰囲気はよかった。スタートが決まって、自分の形に持ち込むことができました」と松若。
モズスーパーフレアが単騎で1馬身半ほど抜け出して馬群を引っ張り、
マルターズアポジー、
ファンタジスト、
ミスターメロディらがつづく。
前半3ハロンは32秒8。
川田将雅が乗る1番人気の
ダノンスマッシュは中団の内。
クリストフ・ルメールが騎乗する2番人気の
タワーオブロンドンは、そのすぐ後ろの外につけた。
「スタートはストロングポイントではないので、真ん中の8番枠はよかった。今日はいいミドルポジションを取ることができた。ダノンをマークしたかったけど、彼のポジションがあまり好きではなかった」
そう話したルメールは、内に
ダノンスマッシュを封じ込めるような形で4コーナーを回り、直線へ。
「どんどん加速して、直線ではずっと伸びていた」
ラスト200mを切っても、まだ
モズスーパーフレアが先頭をキープしている。それを
ミスターメロディがかわしにかかるが、逆に突き放された。
やはり、単騎逃げの形になると
モズスーパーフレアは強い。ラスト100m地点でもまだ先頭だったが、外から
タワーオブロンドンが猛然と伸びてくる。
「思っていたとおりの競馬ができました。最後まで頑張ってくれましたが、勝ち馬の決め手が上でした」と松若。
ゴールまであと3完歩ほどのところで
タワーオブロンドンが
モズスーパーフレアをかわし、先頭でフィニッシュした。
「自信はあったけど、決勝線まで集中して追いました。今の中山はちょっと心配だった。馬場が速いし、後ろの馬にとっては大変になる。でも、
タワーオブロンドンは能力がたくさんあるので勝つことができた。札幌で乗ったときからどんどん強くなって、ス
プリントレースの経験も生かされています」
笑顔でそう言ったルメールは、来週の
凱旋門賞に参戦するため、今日の飛行機でフランスに入る。
「
タワーオブロンドンのリミットはまだわからない。また大きなレースを勝てると思う。今日は飛行機のなかでゆっくり眠れます」
早くからス
プリンターとしての素質を見抜いていたルメールが、初めてのGIをプレゼントしたことによって、「自説」が正しかったことを証明した。
先々が楽しみな、新・ス
プリント王が誕生した。
(文:島田明宏)