ダート牝馬路線は依然として混沌としていて、6歳のプリンシアコメータが牝馬のダートグレードで3勝を挙げているとはいえ、1番人気に支持されたのは前走スパーキングレディーCが5歳にしての重賞初勝利だったファッショニスタ。

　逃げたのは、ある程度予想されたとおり、大井のクレイジーアクセルで、ファッショニスタはぴたりと2番手。クレイジーアクセルが意外に直線半ばまで粘り、ファッショニスタが先頭に立ったところで勝負あったかに思われた。しかし馬群の中から徐々に位置取りを上げてきていたアンデスクイーンが残り100mでとらえると、アタマ差で振り切っての勝利となった。

　それにしてもアンデスクイーンは厳しいレースを強いられた。もともと前に行くタイプではないが、スタートして両脇の馬に前に入られた上に、1コーナーではその前の馬たちがごちゃついて渋滞するような感じになり、さらに位置取りを下げてしまった。それでもすぐ外に出せればよかったが、向正面では前に3頭が併走、外にはラビットランがいて、動くに動けないという状態だった。ようやく外に持ち出したのは3コーナー過ぎ。しかしそこからの追い上げがすばらしかった。レースの上り3F=39秒1のところ、アンデスクイーンの38秒2という数字を見てもそれがわかる。

　この厳しい展開で勝ちきったことは、間違いなく今後に生きてくる。これでJBCレディスクラシックの出走権を得たが、今年の浦和1400mは適距離ではなく、「賞金を加算したのでクラシックもありかな」(西園調教師)とのこと。今年のJBCクラシックでは、日本テレビ盃を圧勝したクリソベリルが早々と回避を表明するなど、たしかにメンバー次第では見せ場をつくれるかもしれない。

　一方、惜しくも2着に敗れたファッショニスタだが、逃げ馬を目標にまったくの正攻法。先頭に立ったときは勝ったと思ったのではないか。ゴール前、アンデスクイーンに交わされてからもゴール寸前では差し返すような感じで踏ん張った。それでも最後のひと押しで敗けたのは、経験してきた距離の差かもしれない。

　逃げ粘っていたクレイジーアクセルをクビ差とらえて3着を確保したのがラビットラン。3、4コーナーでは勝ち馬のうしろを追いかけ、直線ではなんとか伸びてきた。芝からダートに戻って以降、すべて3着以内という数字だけを見ると安定しているようにも思えるが、昨年のブリーダーズゴールドCの圧勝を思えば物足りないレースが続いている。今回8カ月半ぶりの実戦で、馬体重プラス30kgは、「太い感じはしなかった」(デムーロ騎手)ということだが、ここからさらに一皮むけることがあるかどうか。

　あわやという4着はクレイジーアクセル。3歳から今年春にかけては牝馬のダートグレードに挑戦を続けたが、関東オークスの3着が最高という成績。夏以降はグランダム・ジャパン古馬シーズンに狙いを定め、今回、地方馬最先着のポイントも重ね、目論見どおり優勝となった。単騎で楽に逃げ、中央有力馬が牽制し合う展開になれば粘る場面もあるかとも思ったが、そうはならなかった。

　ファッショニスタにぴたりと直後につかれたこともあって淀みなく流れ、1000m通過61秒9は、逃げ馬としては決して楽なペースではない。直線、いつ止まるかと思って見ていたが、ファッショニスタに交わされてからも、2着はあるかという粘りを見せた。この4着は価値がある。あらためて、牝馬同士のダートグレードなら、相手関係や展開次第で可能性がある走りを見せた。

　ファッショニスタと人気を分け合ったプリンシアコメータは、スタート後も行く気を見せず中団ままの10着。牝馬のダートグレードで3勝、2着4回という実績だが、ときに惨敗もあるように、気分が向かないとまったくダメというタイプなのかもしれない。