波乱となった西のメイン、
京都大賞典の払い戻しがターフビジョンに映し出され、そのどよめきが残るなか、第70回
毎日王冠のファン
ファーレが鳴った。
戸崎圭太が乗る圧倒的1番人気の
ダノンキングリーが出遅れ、場内は先刻より大きなどよめきに包まれた。
「時計が速いし、前残りのレースが多いので、いいところにつけたかった。立ち遅れてからは、
リラックスさせ、リズムよく走らせるようにしました」と戸崎。
津村明秀の
アエロリットが好スタートからハナに立ち、後続に2馬身ほどの差をつける単騎逃げの形に持ち込んだ。
2番手は
福永祐一インディチャンプ。
ギベオン、
ケイアイノーテックらがつづく。
先頭の
アエロリットから最後方の
ダノンキングリーまでは8馬身ほど。
そのままの隊列で向正面を進み、3コーナーに入っても、
アエロリットは引っ張り切れないほどの手応えで先頭をキープしている。
1000m通過は58秒5。
「3コーナーで自分からリキんで行きたがってしまった。あそこがなければ、と思います」と津村。
アエロリットは、後続に1馬身半ほどのリードをつけたまま4コーナーを回り、直線に入った。
外から
インディチャンプが持ったままの手応えで並びかける。
「今日は番手の競馬になった。以前ならもっとムキになって頭を上げていただろうけど、スムーズに折り合った。直線でも余力十分でした」と福永。
内の
アエロリットと外の
インディチャンプがびっしり併せる形になって、ラスト400mを切った。
後方2番手で直線に入った
ダノンキングリーが外から猛然と脚を伸ばす。が、まだ先頭から5馬身ほど遅れている。
ラスト200m付近で
インディチャンプが先頭に立ったが、内の
アエロリットに差し返された。福永は言う。
「ラスト200mから脚色が鈍ったのは、距離なのか、58キロの斤量なのか、休み明けのぶんなのかはわかりませんが、成長が感じられる内容でした」
これらの外から
ダノンキングリーが桁違いの脚で伸びてくる。ラスト100m付近で並ぶ間もなく抜き去り、最後は流すようにして先頭でゴールを駆け抜けた。
「馬に勝たせてもらいました。この馬のよさである切れ味が出たレースでした。夏を越して心身ともに成長しています」と戸崎。
結果的に、出遅れたことによって、武器である末脚の切れがより強調されることになった。
皐月賞3着、ダービー2着と、あと一歩のところで戴冠を逃した実力馬が、中距離でのGI獲りに大きく前進した。
(文:島田明宏)