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矢作師がいよいよ憧れの舞台へ リスグラシューと臨む豪G1

デイリースポーツ
  • 2019年10月15日(火) 15時15分
 40年弱の時を経て、青年時代の誓いが実を結ぼうとしている。リスグラシュー(牝5歳、栗東・矢作芳人厩舎)で、コックスプレート・豪G1(26日・ムーニーバレー、芝2040メートル)に挑む矢作師。名門・開成高校を卒業後、オーストラリアで競馬を学んだが、当時目の当たりにした同レースが今もなお、脳裏に焼き付いている。

 「キングストンタウンの3連覇(80〜82年)を生で見たんだ。メルボルンCはお祭りって感じなんだけど、コックスプレートは最強馬決定戦。いつか胸を張ってここに連れてこられるような馬を作って、戻ってきたいと思ったね」

 同馬は79年にデビューし、82年に引退するまで無類の強さを誇った豪州の殿堂馬。その名馬も走った、自らの心を激しく揺さぶった伝統の一戦に、満を持して初挑戦する。

 勝算は十分にある。ムーニーバレー競馬場は、長方形型で直線が短いのが特徴。「好位からの競馬をしたいね。ウインクス(※)クラスじゃないと後ろからは難しいから。ダミアン(レーン)はそのあたりは分かっていると思うし、信頼している」。前走の宝塚記念は、これまでのイメージを覆す2番手からの競馬で快勝。その時も手綱を取った鞍上なら、不安はない。

 芝質も熟知している。「走りやすくて軽い。日本の芝に似ていると思う」と、十分に対応は可能という手応えは得ている。現地のウェリビー競馬場まで脚を運び、調整も確認済み。「水曜(9日)の朝に、オールウェザーが硬くて軟らかい芝でやりました。実質の1本目。まだ気持ちが乗ってきていないけど、落ち着いている。ここまでは至って順調」と歯切れはいい。

 決戦の地のムーニーバレー競馬場に移動し、16日には鞍上を背に追い切る予定だ。「カリカリさせ過ぎず、落ち着き過ぎずというバランスを考えてやっていきたい」と調整のポイントを語る。輸送のたびに体が減っていた以前の姿はもうない。「香港の1回目はひどかったが、2回目ではもう慣れていた。これだけ学習能力の高い馬はなかなかいない」。愛馬の心身の成長を、頼もしく感じている。

 過去には、14年バンデでコーフィールドC(出走取消)に、昨年はチェスナットコートでコーフィールドC(13着)、メルボルンC(14着)に挑戦している。「行った人間の経験もあるからね。検疫場の馬場が良くなくて、チェスナットでも脚元に来たりしていた。とにかく競馬まで無事に行ってほしいね」と、細心の注意を払って本番に臨むつもりだ。

 調整さえ無事に進めば、好勝負になる確信がある。「正直、相手は気にしていないんだ。日本の宝塚(記念)のようなパフォーマンスが出せれば、勝てると思っている。相手というより、自分との戦いだね」とキッパリと言い切る。決戦まで残り2週間を切った。あの日、矢作青年が憧れとともに見た景色が現実になる瞬間を、私も馬券を片手に全力で応援したい。(デイリースポーツ・大西修平)



 ※15〜18年コックスプレート4連覇。33連勝で、19年春に引退。豪州における連勝記録と、最多G1勝利(25勝)記録を持つ名牝。

提供:デイリースポーツ

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