「JBCス
プリント・Jpn1」(4日、浦和)
ゴール寸前で勝機がスルリとこぼれた。女性騎手として史上初の統一ダートG1制覇に挑んだ藤田菜七子騎手(22)=美浦・根本=だったが、相棒の
コパノキッキングを巧みにリードするも首差の2着。惜しくも快挙を逃した。デビュー4年目となる今年、国内外で活躍の場を広げてきたJRA紅一点。悔しさを糧にし、次への
ステップとしてくれるに違いない。
地鳴りのような歓声が一瞬にして悲鳴に変わった。浦和の
セオリー通り、3角発進のまくりを打った藤田菜七子騎乗の
コパノキッキングは、脚勢良く4角先頭へ。そのまま後続を引き離して押し切り態勢に持ち込んだ。これで決まったかと思われた刹那、外から1頭
ブルドッグボスの強襲だ。わずか首差での2着。女性騎手初の統一ダートG1タイトルが、その手からスルリと逃げた。
「とても悔しいです」。菜七子がインタビュースペースに現れた時には、もうJBCクラシックの出走馬が返し馬を終えていた。発走から40分近くたっていたが、まだ目は腫れていた。「チャンスのある馬に引き続き乗せていただいて、勝てなかったのは悔しい。そのひと言です」。普段から競走後に多くを語る性分ではない。思いを一語に凝縮させた。
騎乗自体は完璧だった。ゲートに先入れしたが、同じく枠入り不良傾向のある
ノボバカラがゲート直後で膠着(こうちゃく)したため随分待たされた。発馬後につまずいたものの、影響は軽微だった様子。「手応えは抜群。向正面過ぎからは自分からハミを取ってくれました。抑えつつ、邪魔しないように乗りました。馬の状態はすごく良かったし、ナイターでない分なのか、前走より落ち着きもありました」。インでごちゃつく先行争いをよく見て不利を避け、3番手の外にはまり込んだ。反省しようにも落ち度なし。かといってツキのせいにはしたくない-。複雑な気持ちが表情に浮かんだ。
今年6月には騎手招待競走のウィメンジョッキーズワールドC(スウェーデン)制覇で世界女王に。10月2日には
コパノキッキングで重賞制覇(
東京盃)、新潟で開催&年間リーディングを獲得するなど、休むことなく突っ走ってきた菜七子。この敗戦も決して無駄にはならない。悔しさを糧に、さらなる躍進へとつなげていく。
提供:デイリースポーツ