あくまで個人的な印象だが、国枝厩舎には「デビュー当時の期待が低い馬ほど出世する」という意外なジンクスが存在する。
アーモンドアイは別格として、天皇賞馬
マイネルキッツ、
有馬記念馬
マツリダゴッホ、さらには3冠牝馬
アパパネさえも、当初はGI級の評価には程遠かった。裏を返せば、完成度が低い馬ほど大化けの可能性を残すということか。その意味で今週注目する一頭が、
デイリー杯2歳Sに出走を予定する
サクセッションである。
6月の東京芝8ハロンの初陣は単オッズ1.9倍の人気に応えるV。字面だけ見れば“当初から期待された”素材に映るが、送り出した陣営の感触はさにあらず。「悪くはないけど、まだ緩急に対応できない感じ。一度使って変わってくれたら」(鈴木勝美助手)が厩舎内の主流
ジャッジだった。
「前走のアスター賞はスローの流れを見てハナに行ったけど、危なげない勝ち方だったね。ノーザン
ファーム天栄への放牧を挟んで馬はさらに良くなった。今は気持ちも体もゆったり。行きたがる馬ではないし、今回もある程度の位置で、しまいを伸ばしてほしい」(国枝調教師)
このように、送り出す陣営の評価は一戦ごとにうなぎ上り。前出の鈴木助手も「意外と競馬が上手だし、ハミ受けもスムーズになった。そうなってくると馬は走るよ。今のデキもウチの厩舎で一番いいんじゃないかな。日曜(10日)の競馬に弾みがつく結果を出してくれるといいんだけど」と期待を隠さない。
付け加えれば、「日曜」とは無論、
フロンテアクイーンが出走するGI
エリザベス女王杯だ。派手さのない
メイショウサムソン産駒とあって、こちらもデビュー時の評価は微妙だったが、国枝厩舎の同世代で重賞<1629>は傑出した成績だ。
「調子の波がなくて、堅実に力を出せるのが一番の長所だね。甘草を控えて体を絞った前走(
府中牝馬S2着)で衰えなしを示してくれたし、今回も豊富な経験を力に変えてくれたらいいな」と熊谷博厩務員。昨年の女王杯もスムーズなら3着はあった内容だった。
週末の京都は国枝厩舎の
バイプレーヤーたちに注目して損はない。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)
東京スポーツ