逃げた
クロコスミアが5馬身ほどのリードを保ったまま直線に入った。
2番手につけていた
ミルコ・デムーロの
ラヴズオンリーユーが内に切れ込みながら差を詰める。少しの間、
クロコスミアのほぼ真後ろにいたのだが、デムーロは右鞭を入れて
ラヴズオンリーユーを外に持ち出した。
そうして
クロコスミアが動いたことにより、内埒沿いを伸びてきたクリストフ・スミヨンの
ラッキーライラックの前がクリアになった。前にいる
クロコスミアの
藤岡佑介は右ステッキを入れているので、内のスペースは空いたままになっている。
ラッキーライラックはまっすぐ走りつづけ、
クロコスミアの内を突いた。
「思っていたより後ろのポジションになりました。ペースはそれほど速くなかったのですが、無理に押して行くのはよくないと思い、内で脚を溜めました。彼女(
ラッキーライラック)は走りに集中していました。4コーナーで外に行くこともできたのですが、ラスト200mで内が空いていたのでそこを突きました。切れる脚があるので、突き抜けられる自信がありました」とスミヨン。
内の
ラッキーライラックと外の
ラヴズオンリーユーが馬体を離して併せ、ともに前の
クロコスミアをかわしにかかる。
クロコスミアは、このレースで2年連続2着になっている実力馬だけあって、そう簡単には抜かせない。
しかし、
ラッキーライラックの勢いが違った。
1完歩ごとに
クロコスミアとの差を詰め、並びかけ、そしてかわした。2着に粘った
クロコスミアを1馬身1/4突き放して優勝。昨春の
チューリップ賞以来、1年8カ月ぶりの勝利を挙げた。
父
オルフェーヴルに騎乗し、2年連続フォワ賞優勝、
凱旋門賞2着となった名手が、冷静な手綱さばきで、見事に2歳女王を復活させた。
(文:島田明宏)