今月、我が愛車号が2度目の車検を迎える。中古購入のイ
タリア車で生産は2011年。走行距離も10万キロに迫ってきた。最近は「ミシミシ」と何かがきしんでいるような音を頻繁に出すように…。まさか、
ルパン三世の
フィアットみたいに走行中にボディーが壊れて、最後はシートとタイヤだけになるんじゃないだろうな?
西浦厩舎の岸本助手とそんな話をしていたら、「なんでもそうやけど、年数がいったら、そんなもんとちゃうの。タンスと一緒。俺の車も似たようなもんやし」と。
ちなみに彼の車は質実剛健のドイツ車。イ
タリア車の我が愛車よりはマシのように思うのだが、それに対する返答は「俺らの年齢になったらさ。張り切って飛ばすこともないわけやん? 車は軽で十分。嫁の軽に乗ってると“これでええやん”って思うもんな」。まあ、いろいろな意味で潮時ということなのかもしれない。
初めて
ベンツを購入した某紙の先輩が「ジョッキーが“この馬の乗り味は高級車のそれ”とか言うやろ? その意味がわかった気がするわ」なんて話をしていたことがあった。確かに競走馬の乗り味は車に例えられることが少なくない。なので、岸本助手が乗っている
ウーマンズハートについて「車で言うと、どんな乗り味なのよ?」と聞いてみた。
もちろん、フェラーリとかポルシェみたいな、わかりやすい答えが返ってくると思っていたのだが、彼は「う〜ん、どうなんやろ。ゆくゆくはドイツ車みたいな、しっかりとした感覚になっていくのかもしれんし、そうなりそうな雰囲気もあるんやけどね」。
まさか…とは思うけど、とんでもない馬と思っているのは周囲だけで、実はそこまで奥がない? いやいや、そんなわけないよな。
「なんていうのかなあ。これまでに自分が乗ってきた
ハーツクライ産駒にいなかった感じの馬やからかもしれんけど、早熟っぽいというか、現時点でかなり完成しているように感じるときがある。でも、この血統って晩成のはずやろ? 体もまだまだ緩いわけ。これが不思議なところでさ。この馬が血統通りに成長していったらどうなるんやろうか? すごい馬になるんかもしれんけどな」
ハーツクライ産駒にありがちな頼りなさもあるけど、
ハーツクライ産駒には珍しいほどの“軽さ”もある。これに古馬になって化ける
ハーツクライ産駒の「重厚感」が付いてきたら、どれほどの馬になるのか?
母系は
サドンストーム、
ティーハーフなどを輩出した晩成の短距離血統なのも相まって、数々の名馬に乗ってきた岸本助手でさえも、将来の明確なイメージが湧かない――。ゆえに車にも例えられないということらしい。新聞記者の浅はかな質問にも簡単に釣られないところが、彼らしいといえば彼らしい。
「まあ、走ることは走ると思うし、調整もうまいことできているから」
長い付き合い。その感触は大体の話しぶりでわかる。上位の順位付けが難しい今年の阪神JFだが、週が明けた段階で記者の序列はほぼ固まってきた。
(松浪大樹)
東京スポーツ