13頭の出走馬がほぼ横並びのスタートを切った。
福永祐一が騎乗する1番人気の
コントレイルも、内の2番枠からポンとゲートを出た。
「スタートが上手な馬なので、あまり下げすぎないようにと思っていました。上手く前に馬を置く形を取れました」と福永。
パンサラッサが内に切れ込みながら前に入ってきたときに、ちょっと首を上げるような仕草をしたが、掛かり気味にも見える、抜群の手応えで好位の4番手を進んだ。
向正面でも、
コントレイルは先頭から3、4馬身離れた4番手で前をうかがっている。
3、4コーナー中間地点。ほかの騎手の手が激しく動き出すなか、福永はほぼ持ったままで先頭との差を詰め、直線へ。
そして、ラスト200m地点で内の馬を並ぶ間もなくかわし、先頭に躍り出た。
福永がハミを詰めながら軽く手綱をしごくと、
コントレイルはさらに加速。ステッキを右手に持ち替え一発逆鞭を入れたが、最後の5、6完歩は流すようにして、2着を1馬身半突き放した。
「道中我慢して運べたのは、牧場や、厩舎で、それを目的に取り組んできたおかげだと思います。自信を持って前をつかまえに行きました。非常に楽な手応えだったので、直線でどれだけ突き抜けるかと思っていたら、先頭に立ったとき、躊躇するような面があった。だから前走でライアン(・ムーア)がシバキまくったんだなと思いました」
2歳GI完全制覇を果たした福永は、そう言って笑顔を見せた。
まったく危なげない走りだった。ほかに無敗馬が3頭いたGIであることを忘れさせるほど、圧倒的な力の差を見せつけた。
「今日はもちろん結果を求めなければいけなかったのですが、それ以上に、彼がこの先、どういう舞台でどれだけ活躍するかを占ううえでも非常に重要な一戦でした。オーナーからは『ダービーを目標に』と言われていたので、それを踏まえたレースをしようと思っていました。上手な競馬をしてくれました」
これだけ我慢が利けば、
皐月賞はもちろん、ダービーでも力を発揮できるだろう。
矢作芳人調教師は、
リスグラシューで制した
有馬記念につづく2週連続でのGI制覇。生産者のノースヒルズは、2〜5着馬を生産したノーザン
ファームによる今年20度目のGI制覇を阻止する形となった。
(文:島田明宏)