チュウワウィザードが直線で楽に後続を突き放し6馬身差の圧勝。1頭だけ能力の抜けた馬がいる場合、2着以下は必ずしも能力通りの着順にはならない。まさにそんなレースだった。真っ向勝負を挑んだ対抗格の有力馬は力の違いで跳ね返されて失速、一方で着狙いの伏兵は溜めていた脚を使って上位進出、そんなパターンだ。
逃げると思われた
ヒカリオーソがスタートでタイミングが合わず中団から。それでむしろ最初の3コーナーまでの先行争いが激しくなった。抜群のスタートを切った
チュウワウィザードはすぐに控えたが、
アナザートゥルースが行く気を見せ、しかし
ケイティブレイブが譲らなかった。
2番手、3番手からでもレースができる
ケイティブレイブだが、今回は1番枠で包まれるのを嫌ったのだろう。3コーナーに入ってもペースが緩まず、最初の100mが7秒0のあと、11秒1、11秒6と、11秒台のラップが2つ続いた。
それでもスタンド前の直線で流れが落ち着けばよかったが、スタート後に行き脚がついた
ミューチャリー、連れて進出した
チュウワウィザードがぴたりと追走し、道中もペースがそれほど緩むことはなかった。
そのうしろにいた
デルマルーヴルは、
チュウワウィザードを負かしに行く気満々。1周目ゴール板の手前あたりでは
チュウワウィザードに並びかけようかという勢い。そのプレッシャーは向正面まで続き、それでレースの展開が早くなった(念のため、ペースが速くなったわけではなく、早くなったのは仕掛けのタイミング)。
ケイティブレイブにとっては、
デルマルーヴルに抵抗して前がかりとなった
チュウワウィザードにプレッシャーを受けることになり、息が入るところがなく3コーナーで早々と苦しくなってしまった。
8歳になって前年ほどの勢いはなくなっていた
ミツバ、さらに
アナザートゥルースにも、この流れは厳しかったのだろう。
ケイティブレイブよりも早く、向正面で追走一杯になってしまった。
チュウワウィザードは、そもそもの能力の高さに加え、相手次第、流れ次第でどこからでもレースができるのが強み。今回は
デルマルーヴルに来られたら来られたぶんだけ前に出て、それでもなお余裕があった。それが他馬を圧倒しての6馬身差。
チャンピオンズCでは上位3頭の争いに加われず4着に敗れていたが、5歳でまだ15戦という戦歴だけに、その差を詰める可能性はありそう。
そもそも
チュウワウィザードにとって
チャンピオンズCの中京1800mは忙しい。実際、浦和2000mの
JBCクラシックでは
オメガパフュームを負かしているように、2000mかそれ以上の距離ならそれほど差はないのではないか。さらに小回りコースの長距離戦でこそ能力を発揮するタイプにも思える。
スタートで出負けした災いが福と転じたのが
ヒカリオーソ。無理に前を追いかけていくことはせず、腹をくくって中団から。向正面中間、
ミツバと
アナザートゥルースが下がり始めたのと入れ替わるように進出を開始した。
そのぶん、直線で使える脚を残していての2着。レースの上り3Fと勝った
チュウワウィザードの上りが同じ39秒0で、ほかに39秒台の上りは
ヒカリオーソ(39秒7)だけ。3着以下はすべて40秒以上の上りを要していて、勝ち馬を目標に先行した馬たちの流れがいかに厳しかったかがわかる。
冒頭で触れたとおり、真っ向勝負を挑んで3着に屈したのが
デルマルーヴル。グリムにクビ差まで迫った
白山大賞典や、3コーナーでまだ離れた5番手という位置取りから差し切った
名古屋グランプリなどのレースぶりから、この馬も2000mを超える長距離戦に適性があるように思える。
4着は、積極的に2番手からレースを進めた
ミューチャリー。
ケイティブレイブが3コーナーで後退したところで先頭に立ち、さすがにその時点で、勝った
チュウワウィザードとは手応えの差が歴然だったが、直線半ばで脚が上りながらも3着
デルマルーヴルにクビ差は評価できる。
中団から直線の切れ味勝負で結果を残してきた
ミューチャリーが今回は2番手で先行し、一方、逃げるか2番手から早め先頭で重賞4勝を挙げた
ヒカリオーソが今回は中団から直線脚を伸ばして2着という結果は興味深い。
勝ち馬は別次元の強さだったが、明け4歳の期待馬2頭が、ともにこれまでとは違うレースぶりで中央勢と互角に戦えたということでは、今後のダート
グレード戦線でさらなる活躍を期待してもよさそうだ。