出走馬16頭すべてが関西馬となった第34回
根岸ステークスのゲートが開いた。
1番人気に支持されたオイシン・マーフィーの
コパノキッキングは速いスタートを切り、最初の数完歩で他馬より体半分ほど前に出た。一方、
クリストフ・ルメールが騎乗した
モズアスコットはアオり気味にゲートを出て、後方からの競馬となった。
「ゲートのなかでちょっと座って、出遅れました。でも、すぐにハミを取って、楽に流れに乗れました」とルメール。
その5馬身以上前を行く
コパノキッキングは引っ張り気味の手応えで進み、外から来た馬を先に行かせ、2番手で3コーナーに入って行く。
モズアスコットは馬群の外から前との差を少しずつ詰め、8、9番手で3、4コーナーを回った。
直線。ラスト400m地点で
コパノキッキングが先頭に立った。
直後の外から
ワイドファラオが迫ってくる。
さらに1頭置いた外から、
モズアスコットが猛然と追い上げてくる。ルメールはこう振り返る。
「いつも長くいい脚を使ってくれる。ダートは初めてだったけど、すごくいい反応だった」
ラスト200m。
モズアスコットが内の
ワイドファラオをかわし、粘り込みを狙う
コパノキッキングに迫る。
そして、並ぶ間もなくコパノを抜き去り、これに1馬身1/4差をつけ、ゴールを駆け抜けた。
モズアスコットにとっては、2018年の
安田記念以来、約1年8カ月ぶりの勝利となった。
「この馬で勝つのは久しぶりなので嬉しいです」とルメール。
「もっと大きなところを獲らせて、世界的な種牡馬にしたい」という、18年
安田記念後の
矢作芳人調教師の言葉が思い出された。
2000年代初頭に、
クロフネ、
アグネスデジタル、
イーグルカフェ、
アドマイヤドンといった馬たちが、芝とダート両方のGIを制している。
フェブラリーステークスの優先出走権を得た
モズアスコットが、歴代の名馬たちに肩を並べる結果を出すことができるか。またひとつ、新たな楽しみが増えた。
(文:島田明宏)