同じ日の複数の競馬場に厩舎が有力馬を出走させる時、我々取材者はどこに調教師が行くかを気にしがちだ。当然ながら、より色気のある方に行くと思うからだが、中にはポリシーを持って、あえて目立たない方に臨場するトレーナーもいれば、色気のある方に行ったはいいが、実際には行かなかった方の馬が勝ってしまうトレーナーも…。
10年前の
チューリップ賞当日に取った佐々木調教師の行動は、まさにそんな実例だった。阪神の
桜花賞トライアルに管理馬
ショウリュウムーンが出走するにもかかわらず、トレーナーが選んだのは中山。もちろん、計3頭も出走させたことが中山臨場の理由だっただろうし、実際に中山で管理馬が未勝利戦を勝ったのだが…。
「哲ちゃん(佐藤哲三元騎手)と中山のモニターで
チューリップ賞を見ていたんだけど、あれはビックリしたね。まさか勝つとは思っていなかったから。(上田亙)オーナーも、(
木村健)ジョッキーも(
JRA)重賞初勝利。レース後、オーナーから“どうしたらいいんだ?”って電話がかかってきて。“ウチのスタッフがいるので、とにかく下に降りてください”と話したのを今でもよく覚えているよ」
まさに競馬はやってみないとわからないという一例だろう。
レシステンシアが阪神JFで見せた走りを再現すれば、誰もかなわないであろうと思われる今年の
チューリップ賞。
ショウリュウムーンの子
ショウリュウハルで臨む佐々木調教師も「あの馬に勝てるとは思っていない」と正直な感想を漏らす。
だが、やってみないとわからないのが競馬だ。「前走(
白菊賞1着)は出走をやめようかとも思っていたくらいのデキ。これまでいい状態で使ったことがなかったんだけど、今回はメッチャいいんだ。こんなことは初めて」と聞かされると…。もしかして
レシステンシア相手に食い下がることもあるかも…と、つい思ってしまう。
(栗東の坂路野郎・高岡功)
東京スポーツ