稍重で始まった芝コースは、第9レースから良に回復していた。
昨年の
最優秀3歳牡馬サートゥルナーリアの年明け初戦として注目された第56回
金鯱賞のゲートが開いた。
12頭がほぼ揃ってゲートを出た。
クリストフ・ルメールが騎乗する
サートゥルナーリアも速いスタートを切った。今日はパドックでも
リラックスしており、下げ気味にした首を伸ばして、気持ちよさそうに歩いていた。
メンタル面での落ち着きは走りにも現れており、正面スタンド前でルメールが、短く持った手綱を抑え気味にすると、周りの馬たちを先に行かせる。そのまま1、2コーナーを回り、5番手の外目にポジションを固定した。
昨年、ダービー4着、
天皇賞・秋6着と東京で結果を出せなかったため、左回りの適性を不安視されていた。また、今日は別定の58キロを背負っていた。
「左回りは問題ありませんでした。レース前も心配していなかった。1、2コーナーも、3、4コーナーも、馬の
バランスがよかったです」とルメール。
向正面では、
サトノソルタスの2馬身ほど後ろにつけ、行きたい気持ちを抑え、引っ張り気味ではありながらも、折り合って走っていた。ルメールはこう話す。
「休み明けは大切です。今日はスムーズなレースをしたかった。いいポジションを取って、冷静に走ってくれました」
4コーナーでも抜群の手応えのまま、外を回って前との差を詰め、直線へ。
ラスト400mを通過しても、ルメールは手綱を持ったままだ。
ラスト200m地点で前の馬たちに外から並びかけた。ルメールが軽く仕掛け、さらに手綱をしごく動きを大きくすると、どんどん後ろとの差を広げて行く。ノーステッキのまま、ゴールまでの4、5完歩は流すようにして、2着を2馬身突き放した。
「最後はいい脚を使って、前の馬をかわしてくれました。まだエンジンがあります。この馬でもう一度勝つことができて嬉しいです」とルメール。
エキサイトしやすいところがあるので、無観客だったことがプラスに作用した面はあったとしても、強かった。
始動戦でさらに成長した姿を見せた世代最強馬
サートゥルナーリアが、現役最強の座へ、確かな一歩を踏みしめた。
(文:島田明宏)