戦後初の無観客GIとなった第50回
高松宮記念は、午前までの降雨のため重馬場で行われた。
「逃げ宣言」をしていた、
松若風馬の
モズスーパーフレアがハナに立った。2番手に3馬身ほどの差をつけ、単騎で快調に飛ばす。
2番手から後ろは比較的かたまり、最後方の
アイラブテーラーだけがポツンと離される展開になった。
抜群の手応えで、
モズスーパーフレアが先頭のまま直線へ。内埒から馬1頭ぶんほど離れたところをそのまま進む。ラスト400mを切ってもまだ手応えには余裕がある。ラスト300mを切ったあたりで初めて松若の右ステッキが入った。
背後から
北村友一の
ダイアトニックと、
和田竜二の
クリノガウディーが迫ってくる。勢いは外の
クリノガウディーが一番だ。
クリノガウディーが一気に抜き去るかに見えた。が、同馬は内に斜行し、
ダイアトニックを内に押し込むようにして走行を妨害。そのあおり受けた最内の
モズスーパーフレアもフットワークを乱した。
ダイアトニックは、鞍上の北村が立ち上がって手綱を引くほどの大きな不利を受けた。そして、内の
モズスーパーフレアのトモを弾くような格好になったわけだが、もう少し前後左右の位置がずれていたら、前脚をさらわれて転倒しかねない、危険な局面だった。
加害馬となった
クリノガウディー自身も、手綱の操作で進路を修正して3完歩ほど追えなくなるロスがあった。
その間に、ラスト400mを切ってから外に持ち出された
池添謙一の
グランアレグリアが凄まじい脚で伸びてきた。
グランアレグリアが内で叩き合う3頭に追いつき、かわしかけたところがゴールだった。
1位入線は
クリノガウディー。2位
モズスーパーフレア、3位
グランアレグリア、4位
ダイアトニックの順だった。着差は鼻+鼻+頭という大接戦であった。
クリノガウディーが、
モズスーパーフレアと
ダイアトニックの走行を妨害したことに関して審議が行われた。その結果、走行妨害がなければ、被害馬は加害馬に先着できたとして、
クリノガウディーが4着に降着。
モズスーパーフレアが繰り上がって1着となった。
他馬が避けた最内を迷わず進んだ松若の判断も素晴らしかったが、それに応えて伸び切った
モズスーパーフレアが強かった。同じように、迷いのない戦術を取った池添も、
グランアレグリアの力を引き出した。
モズスーパーフレアにとっても、デビュー7年目、24歳の松若にとっても、これが嬉しいGI初制覇となった。
(文:島田明宏)