「
高松宮記念・G1」(29日、中京)
史上初の無観客G1を制したのは、逃げ粘った9番人気
モズスーパーフレア。2着入線も、1位入線の
クリノガウディーが進路妨害により降着したため、繰り上がりで優勝をさらった。鼻差の2着に2番人気の
グランアレグリア、さらに頭差の3着が4番人気の
ダイアトニック。1番人気の
タワーオブロンドンは12着に終わった。なお、売り上げは前年比100・4%と、盛況と言っていい数字を残した。
かつてないほどの静寂の中で繰り広げられた激闘は、想像だにしない形で幕が下りた。史上4度目となる1位入線馬の降着劇。ゴール前、わずか2センチ差で
クリノガウディーが新王者に輝いたと思いきや、ゴール前で内側に斜行したため4着降着へ。2位入線の
モズスーパーフレアが、繰り上がりでG1初制覇を決めた。
「負けたと思ったのが率直なところですし、正直、勝ったという実感はないです。素直に喜べないですけど、勝てたというのはうれしいですね」。待望のG1ジョッキーとなった松若は複雑な表情を浮かべる。肩を落として検量室に引き揚げた後、17分にも及ぶ長い審議が行われ、裁決が出した結論は「降着あり」。裁決室から出てきた松若と音無師は控えめではあったが、固い握手をかわした。
史上初の無観客G1とあって、口取り式や表彰式などのセレモニーはなし。G1ファン
ファーレも生演奏ではなく、CD音源だった。ただ、鞍上が見せた絶妙な手綱繰りには、テレビ観戦するファンも思わず大きな歓声を上げたに違いない。重馬場だったこの日の芝のレースは外差しばかりが決まっていたが、あえてこれを逆手に取った。「みんなの意識が外に向いていると思って」。戦法は内ピッタリで迷いなし。経済コースを回って他馬を翻弄(ほんろう)した。昨年の
スプリンターズSでは2着惜敗。入線後の結果は同じだったが、今度は幸運が飛び込んだ。
指揮官は「すっきりしない勝ち方だけど、松若が乗り代わりがあっても腐らず、日々努力しているのを見てきたから。最高だね」と師弟によるG1初タイトルに感慨深げ。次なる目標は
スプリンターズS(10月4日・中山)での春秋短距離G1制覇だ。「今度は正々堂々と勝って、お客さんの前でウイニングランをしたいですね」と決意を語った主戦。自信をつけた人馬が、腹の底から歓喜を上げるべく、秋の大舞台を目指す。
提供:デイリースポーツ