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【勝負の分かれ目 桜花賞】パートナーを信じ切った松山騎手のリードで、デアリングタクトが戦後最少キャリア制覇を達成

  • 2020年04月12日(日) 17時45分
 阪神競馬場の芝は良馬場でスタートしたが、降りしきる雨が、第10レースの大阪-ハンブルクカップから重馬場のコンディションへと変えていた。

 第80回桜花賞のゲートが開くと、1番のナイントゥファイブ、3番のスマイルカナら、内枠の馬たちが速いスタートを切った。

 スマイルカナがハナに立ち、ナイントゥファイブが2番手、5番のマルターズディオサがつづく。外の17番枠から出た武豊レシステンシアは他馬と横並びのスタートからじわっと押し上げ、ゲートから1ハロンほどのところで4番手につけた。

 レシステンシアはさらにポジションを上げ、2番手で3コーナーに入って行く。

 そこから5馬身以上離れた馬群の内にいた松山弘平デアリングタクトは、やや行きたがっているように見えた。が、松山が手綱を引いていたのは、掛かり気味の走りを制御するためだけではなく、外を塞いでいた馬たちを先に行かせ、自分が外に出るための準備をしていたからでもあった。

 前半3ハロン通過は34秒9、4ハロン通過は46秒5。馬場状態を考えると、かなり速い流れだ。

 外に出すためデアリングタクトのポジションはさらに後ろになったが、「ポジションは意識せず、馬のリズムを大事に乗ろうと思っていました。そうすれば最後はいい脚を使ってくれると信じていました」と言う松山にとっては都合のいい展開になった。

 デアリングタクトは先頭から10馬身ほど離れた位置にいたが、3、4コーナーで外から差を詰めていく。

 一方、レシステンシアは、溜め逃げをして弾けなかった前走とは異なり、4コーナーを仕掛け気味に回ってロングスパートをかける。

 そのレシステンシアの内に併せる形になったスマイルカナがわずかに先頭のまま直線に向いた。

 スマイルカナレシステンシアが後ろを離して叩き合う。

 レシステンシアが前に出かかるが、スマイルカナも譲らない。

 ラスト200m。直線入口では5馬身ほど後ろにいたデアリングタクトが外から凄まじい脚で伸び、差を詰めてくる。

 ラスト100mを切ったあたりで、手前を右に戻すとさらに加速し、内のレシステンシアを並ぶ間もなくかわし、1馬身半の差をつけてフィニッシュ。重賞初勝利をクラシック制覇で飾った。デビュー3戦目での桜花賞制覇は、戦後、2歳戦が行われるようになってからの最少タイ記録。

 その3戦すべてで手綱をとった松山が、パートナーを信じ切って勝ち獲った栄冠であった。

(文:島田明宏)

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