無敗のGI馬2頭が繰り広げるゴール前のデッドヒートに沸いた牡馬クラシック第1弾・
皐月賞。今週末に迫った第25回
NHKマイルC(10日=日曜、東京芝1600メートル)も、無敗馬2頭の直接対決に注目が集まる。その一翼を担うのがデビューから3連勝でGII・ニュージーランドTを制した
ルフトシュトローム。鞍上に
オーストラリアの若武者レーンを迎えて、一気に3歳マイル王の座を射止めることができるか。東スポが誇る敏腕・立川敬太記者がその可能性を徹底追及する。
短期免許で初来日を果たした昨年の上半期にいきなりGI・3勝の大暴れ。特例が認められた暮れの
有馬記念でも
リスグラシューを有終の美に導くなど、日本競馬に竜巻級の旋風を巻き起こしたレーン(他にも
メールドグラース、
リスグラシューで豪GI・2勝)。
今回、この“勝利請負人”がコンビを組むのは、身元引受調教師である堀調教師の管理する
ルフトシュトロームだ。自身が手綱を取って
皐月賞で惜敗を喫した
サリオスも同じ堀厩舎の所属馬。その無念を晴らす意味でも、この
NHKマイルCに懸ける意気込みは並々ならぬものがあるに違いない。
「3戦3勝というのは簡単にできることじゃない。このような
ステップを踏んでいるのはポテンシャルの高さがあるからこそ。もちろん、これまでのレースぶりはVTRで何度も見ている。まだ
チャレンジャーの立場だと思うが、チャンスのある馬であることは間違いないだろう。彼とのコンビで最高の結果を出せるようにベストを尽くしたい」とレーン。
まだレースでも調教でも背中の感触を味わったことがないながらも、大舞台へ向けてしっかりとイメージを膨らませている様子だ。
ルフトシュトロームのこれまでの3戦を見返すとその強さばかりが際立つ。とりわけ前走のGII・ニュージーランドTは、ゲートで立ち遅れたうえに3ハロン通過34秒2と速めの流れ。好位から楽に抜け出したそれまでの2戦とは全く違う、中団より後ろの位置取りになったものの、メンバー最速の上がりを繰り出してきっちり差し切って見せた。
能力の高さに疑いなしとなれば、気になるのは状態面のみ。中間の初時計は4月30日の美浦南ウッド。「前走後に少し疲れが出たので、ゆっくり疲れを取ってから徐々にピッチを上げています」と森助手。若干遅れ気味にも映る調整過程だが、「(1週前追いは)単走でしたが素軽い動きでしたし、力を出せる態勢に整えられると思います。中山で3戦続いたのはローテーションの関係。少し不器用な面もあるので、東京替わりがマイナスにはならないはず」とノープロブレムを強調すると同時に、初の東京コースも好材料との認識を示した。
果たして年明けデビューの“遅れてきた大物”が、わずか4か月に満たないキャリアで3歳マイル路線の頂点を極めることができるのか―。
無観客競馬が続く現状に触れ、「このような世界情勢の中で競馬に乗れる喜びを実感している。多くの期待を感じているし、その期待に応えるのが私の仕事。チャンスのある馬に乗せてもらっている以上、勝負にこだわった騎乗を心がけていきたい」と語ったレーン。
その答えを明確にするための準備は、人馬ともすでに整っている。
(立川敬太)
東京スポーツ