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重賞3連勝の“絶頂娘”サウンドキアラ「怖いくらい理想的な臨戦過程」/トレセン発秘話

東京スポーツ
  • 2020年05月13日(水) 18時00分
 ご利用は計画的に――。競馬に関わる以上は肝に銘じておきたいフレーズだ。第15回ヴィクトリアマイル(17日=東京芝1600メートル)にエントリーした馬の中で最も強い馬は? こう問われれば、アーモンドアイで間違いないのだろうが…。一年のスパンで最も計画的に駒を進めてきた馬は? こう問われるなら、その答えは別にある。

 今回も断トツの支持を集めるであろう、現役最強馬アーモンドアイが出走した昨年暮れの有馬記念。当時(今も)まだド素人に毛が生えた程度だった私は、彼女の勝利を信じて疑わず、3連単の「頭」固定で(そこそこの)大金をぶち込んだ。結果はご承知の通り9着惨敗。熱発により香港カップを回避しての有馬スライド参戦。今にして思えば、「絶対女王」のリズムが微妙に狂っていたことは想像に難くない。

 目標が大きなレースになればなるほど、陣営はそこから逆算して、レースおよび調教のスケジュールを綿密に組み立てて臨む(らしい)。プロスポーツとしては当然のことなのだが、アスリートではなく、サラブレッドが相手。机上の計算通りにはいかないし、そこが面白いところでもある。“競馬は甘くない”――。トレセンに来てから何度も耳にしたセリフが頭の中でこだました。

 アーモンドアイが前回以上に想定外のローテでここに挑むことは周知の事実だ。コロナウイルス禍により、参戦予定だったドバイ国際競走(ドバイターフ)が現地到着後に中止になる前代未聞のアクシデントに見舞われ、帰国→検疫後に当レースへの参戦を表明した。この想定外の臨戦過程こそが、現役最強馬の“ありの一穴”になる可能性は決して低くはない。

 ではリズムを崩した最強馬を倒すのは? 最高のリズムでこの大一番を迎える、最も勢いのある馬サウンドキアラに託そうではないか。

 今年に入り京都金杯京都牝馬S阪神牝馬Sと重賞3連勝。「だいぶ前からここを目標に設定して、順調にメニューを消化し、重賞を勝ち続けています。怖いくらい理想的な臨戦過程ですし、並大抵の馬ではできないことですよね」と森崎助手は胸を張る。

 サウンドキアラは2年続けてのヴィクトリアM参戦だ。格上挑戦となった昨年は、コースレコードが叩き出される超高速決着の中、0秒7差7着と健闘。森崎助手は「あの結果を見て“(来年は)やれる”確信を得ましたね」とターニングポイントになったレースを振り返る。

 自己条件に戻って長岡京Sを勝ち上がり、続くリステッドのリゲルSは重賞勝ち馬相手にハナ+クビ差の3着大接戦。そして前出の重賞3連勝へとつなげたように、ほぼ最短で「本格化への道」を歩んできた。この突然の(ように見える)開花の要因として、森崎助手は気性面の成長を真っ先に挙げる。

「もともと乗りやすく、レースセンスのある馬でした。ただ若いころはおてんばで、牝馬特有のキーッとなる気性だったから、使って体重が減る心配なども考慮して、馬なり中心の調教しかできなかったんです。徐々に落ち着きが出てきたことで、強めの追い切りもできるようになり、それが体の強さにもつながっていきましたね」

 つまり、気性面の成長により、「カイバが実になる」→「より強めの調教が可能になる」→「さらに体ができてくる」という好循環を生んだのだ。天性のレースセンスに、肉体面の充実も加わったことが重賞3連勝で見せた、まるでリプレー映像を見ているかのような安定したレースぶりにつながっている。

 繰り返しになるが、スムーズとは言えない臨戦過程のアーモンドアイとは対照的に、思い描いた計画通りの道を歩んできたのがサウンドキアラ。その差が付け入る隙になるはずだし、森崎助手も「(アーモンドアイに)臆することなく向かっていってほしいですね」と願いを込める。サウンドキアラの最大の挑戦を、ぜひ注目してほしい。

(元広告営業マン野郎・鈴木邦宏)

東京スポーツ

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