今年は無観客の
日本ダービーとなる。1944年以来で、
JRAが発足した1954年以降では初の異常事態だ。
トウカイテイオーが勝った1991年から現場で見続けてきた筆者にとって、今年は30年連続30回目のダービー取材となるはずだった。
しかし、コ
ロナによる特定警戒都道府県への移動の自粛要請に従って、福島県から東京都への移動はできない。やむを得ないことだが、ダービーの現場取材を断念した。ダービーは取材者にとっても競馬の祭典だ。立ち会えないのは無念だ。極めて異例の事態を迎えると平時のありがたみを痛感する。
今年は歴史的瞬間に立ち会えたかもしれない。
皐月賞馬
コントレイルには史上24頭目の春2冠、史上11頭目の無敗のダービー馬、史上7頭目の無敗の2冠の記録がかかる。ダービーが無敗のGI3勝目になるのは史上初。
ホープフルSがGI昇格後、その勝ち馬がダービー馬になるのも初めてだ。
じつは、同じようなデータを昨年も見ている。昨年の1番人気
サートゥルナーリアも
ホープフルSと
皐月賞を無敗で制しており、同様の記録を懸けて挑んだが4着に敗れた。近年、
皐月賞は
トライアルを
スキップする馬が目立つ。
サートゥルナーリアは
ホープフルSから
皐月賞へ直行した。
コントレイルも同じだ。勝ってダービーが5戦目だった点も同じ。
ただ決定的に違うのは、
サートゥルナーリアは東京コースが初めてだったのに対して、
コントレイルは
東スポ杯2歳Sで東京コースを経験していることだ。しかも、その
東スポ杯2歳Sが圧巻のパフォーマンスだった。1800m芝1分44秒5は
JRA2歳レコード。
ダノンキングリーの
毎日王冠に0秒1差はケタ違いの内容だ。
コントレイルには、
サートゥルナーリアにはなかった東京の高速決着に対応した実績がある。
皐月賞は最内枠で位置を下げさせられる厳しい競馬になったが、3角で外に持ち出してからは持続力のある末脚を繰り出し外からねじ伏せた。1週前追いでは、福永騎手がさらに成長したという感触を伝えた。折り合いの不安がなく距離延長への不安もない。
筆者が初めて取材した1991年のダービーは、
トウカイテイオーが無敗の2冠馬となった。本来30回目の取材だったはずの今回も無敗の2冠馬が誕生するかもしれない。奇妙な符合だ。
ディープインパクト産駒の最高傑作となるか。限りなくその可能性は大きいと見る。
皐月賞が難解なのは、各馬違う
ステップを選択した馬が初めて一同に会するから。しかし、ダービーは
皐月賞で力関係を判断できる。今年も
皐月賞以外の別路線は一枚落ちる。
青葉賞は
オーソリティ、
京都新聞杯は
ディープボンド、
プリンシパルSは
ビターエンダー。いずれも
皐月賞前に底が見えた馬ばかりだ。敗れた中に昨年の
ロジャーバローズのような存在は見当たらない。
コントレイルを脅かす馬は
サリオス以外にいない。2着だった
皐月賞では、インで脚をためて
コントレイルが外から来るのを待って追い出した。レーン騎手が、
有馬記念の
リスグラシューで見せたような完璧な騎乗だった。それでも
コントレイルに力でねじ伏せられた。馬場の荒れたインを走ったのは不利だった。広い東京で高速馬場での一騎打ちなら、わずかに逆転の可能性があるか。
ハーツクライ産駒で、折り合いの不安がなく距離はこなせるだろう。
皐月賞の3着以下とは決定的な差を感じた。とはいえ、5着
サトノフラッグはやや仕上がり過ぎていた印象で、ゆったり余裕を持たせた調整で変わり身がある。距離延長は好材料だろう。あとはここに照準を合わせた
ワーケア、距離延長で一変の可能性を秘める
サトノインプレッサか。
コントレイルの1強で、
サリオスとの一騎打ち。それが筆者の結論だ。
(文=福島民報・高橋利明)
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