圧倒的1番人気に支持された
松山弘平の
デアリングタクトは、ポンと速いスタートを切った。自身は出たなりで進みながら、他馬を先に行かせ、少しずつポジションを下げて行く。
「スタートがよく、中団くらいを取れると思ったのですが、1、2コーナーで2回ほど、狭くなったり、ぶつかったりしたので、下げて溜めることに専念しました」と松山。
無理にポジションを取りに行かなかったのは、「最後は本当にすごい脚を使う」というパートナーを信じ切っていたからだろう。
1、2コーナーを11、12番手で回り、向正面へ。
1000m通過は59秒8。ひとつ前の第10レース、芝1400mの
フリーウェイステークス(3勝クラス)の勝ちタイムが1分19秒7という、レコードよりコンマ3秒遅いだけの高速馬場だったことを考えると、ややスローと言っていい流れだ。
単騎で逃げる
スマイルカナ以外は10馬身ほどの隊列となり、騎手が重心を後ろにかけて、行きたがっている馬が複数いた。
デアリングタクトもその1頭だった。
デアリングタクトは後方の内につけたまま3、4コーナーを回り、直線に向いた。
先頭との差は7馬身ほどある。
デアリングタクトの前は壁になっている。
ラスト400m地点。松山は、前を行く
マルターズディオサの外のスペースを狙ったが、外から
リアアメリアが伸びてきて、その隙間が狭くなった。
すぐさま松山は進路を切り換え、
マルターズディオサの内を突いた。同じスペースを、
マジックキャッスルの
浜中俊も狙っていたが、わずかに前に出ていたぶん、先に通ることができた。
ラスト200m手前で、
デアリングタクトの前方がクリアになった。
こうなれば敵なしだ。
手前を2度ほど替えながら、先に抜け出していた内の2頭をかわし、無敗の二冠制覇を達成した。
騎乗馬を信じ、道中で迷わず溜めた松山の判断が、究極の瞬発力を引き出した。
(文:島田明宏)