ダービーウイークはある意味、当コラムの最終回に当たるのだが、振り返れば、昨年6月に現3歳世代で最初に取り上げたのが
サリオスだった。
「今回の2400メートルは新たなチャレンジになる。
サリオスは大きな馬で、パワフルなタイプ。広い東京は向いていると思う。強い馬(
コントレイル)はいるけど、自分でも楽しみにしている」とはレーン。デビュー時からたびたび取り上げてきた
サリオスの走りをしっかりと見届けたい。
その一方で当コラムはひと足先に“次世代”にも目を向けたい。というのも、
サリオスの堀厩舎には昨年同様、3回東京開幕週の芝1600メートル新馬戦(6月6日)を目標にしている有力馬がスタンバイしているからだ。それが
ブエナベントゥーラ(牡=父
モーリス)。母は名牝
ブエナビスタ、鞍上には昨年の
サリオス同様にレーンを予定となれば、期待の大きさは説明するまでもないか。
「4月に入厩してゲート試験に合格してからも、在厩で調整を進めています。まだハミ受けやカッとなる気性面など、2歳馬らしい課題はありますが、そういった面を矯正しつつ、レースに向けて順調にきています」とは森助手。
普通に考えて
サリオスとの比較はまだ時期尚早。それでも、21日の南ウッドでは両サイドに古馬を置いた併せ馬で5ハロン67.2-12.1秒をマーク。順調さはもちろん、攻めの強度、そして動きの良さは、同時期の
サリオスに匹敵するレベルと言って間違いない。
この状況に敏感に反応したのが藤沢和調教師。
サリオスが制したくだんの新馬戦に、
アブソルティスモをぶつけて1番人気2着に敗れた苦い思いがある。「堀君のところはウッドで(5ハロン)67(秒台)だってな。どうなんだ?」とは藤沢和調教師。
“どうなんだ”と聞かれて、“いいみたいです”と答えるよりほかになかった記者だが、あれだけの名トレーナーがここまで他陣営の動向を気にするのも珍しい。しかもGIのようなビッグレースならともかく、新馬戦でだ。師の個人的心情もあろうが、
ブエナベントゥーラの大物ぶりを表すエピソードともなろうか。
もちろん、藤沢和調教師もただ指をくわえて見ているだけではない。同じ番組に
ショベルヘッド(牡=
父Curlin、
母Date to Remember)をスタンバイさせており、こちらも鞍上は昨年の
アブソルティスモと同じルメールを予定している。
「ウチは速いところは坂路だけど、かなりの量を乗り込んでいるからな。(
ブエナベントゥーラの)相手にとって不足はないはず」とニヤリ。
人気の面では
サリオスVS
アブソルティスモの昨年とは逆になることが濃厚だが、こちらは
ブエナベントゥーラよりも早くに入厩し、ここまでみっちりと乗り込んできた。藤沢和厩舎でデビュー前にこれだけ長い期間、調教をこなして出走を迎える馬は見たことがない。
「(2022年2月末で引退を迎えるため)クラシックは来年が最後。頑張りますよ」と藤沢和調教師。名門厩舎同士が早くも火花を散らす、新たな熱い戦いがもうすぐ見られる。
(立川敬太)
東京スポーツ