かつて
ディープインパクトは「飛んでいるよう」と翼を広げた鳥に例えられました。また走る馬を「F1カーみたい」と言うのもよく聞きます。このように競走馬はしばしば別の生き物や乗り物に例えられます。
実際に馬に乗ったり触ったりしている方たちだからこそ分かる感覚。例えを使ってもらうことで、その感覚が少しだけ共有できる気がしていましたが…。平田調教師から次の言葉が出たとき、私は絵に描いたような“キョトン顔”になってしまいました。
「ウチの
ドゥラメンテ(産駒)は
ブラキオサ
ウルスに似てるんや」
ぶ、ぶ、ぶらきおさうるす???恐竜の?ちょっと想像がつかないんですけど…。目を白黒させる私に、平田調教師は笑いながら続けます。
「とにかくデカい。首も長い。幅があるだけじゃなくて体高もあるから、上から降りるときは大変なんやで」
なんでも“馬から降りる”というより“2階から飛び降りてる”ような感覚になるそう。どんだけデカいのよ。全然イメージできません。でも、その馬を前にした私の口から出たのは「
ブラキオサ
ウルスだ!」。ええ、平田調教師の言う通りだったんです。
ブラキオサ
ウルスこと
ノボリスターリーは、父が新種牡馬の
ドゥラメンテ、母は仏重賞(ペ
ネロープ賞)を勝った
ダリオール。550キロ前後ある超大型の牡馬で、間近で見ると圧を感じるほど迫力があります。長い首をゆっくり回して、のぞき込んできた彼と目があったときは、
ジュラシック・パークのBGMが頭の中に流れましたよ。
「今までウチにはいたことがないタイプ」だそうですが、私にはもう一つ気になったことが。冠名「ノボリ」といえば原田豊オーナー。平田厩舎に入厩していたことってありましたっけ?少なくとも、私の担当厩舎になってからの2年はいなかったような…。
「実は初めて。牧場に紹介していただいたんやけど、俺、松永(昌)先生のとこにいた
ノボリディアーナっていう馬が好きでさ。ぜひやらせてください!ってお願いして、このスターリーが来てくれたんだよね。だからちょっと緊張するわ。俺にしては珍しく」
開業15年目にして新しくご縁ができたオーナーさんの馬。何とか勝ち上がらせたい平田調教師の気持ちが伝わってきました。これは乗っている方の感触も聞くっきゃありません。攻め専の堀部助手に突撃です!
「
ドゥラメンテ産駒ってどんなだろうと思っていたけど、この馬に関してはとにかく骨格から大きい。その分、まだ体を持て余している感じはあるけど、筋肉がついてくれば、すごくいい馬になると思う」
3月にノーザン
ファームへPOG取材に行った際、
ドゥラメンテ産駒は「奥が深そうな馬が多い」とお聞きしましたが、厩舎での感触も同じなんだと再確認。「特にいいなと思うのは、距離が持ちそうなところ。スピードに乗るまでには時間がかかるけど、一旦乗ってしまえば、いい脚が長く持続する。走りは芝っぽいし、将来性はあると思うよ」と堀部助手。芝の長距離に適性があれば、クラシックが見えてきますもんね。そうなってほしいなあ。デビューは日曜(28日)阪神の芝外1800メートル予定です。
「
ドゥラメンテは気が難しかったようだけど、スターリーはめっちゃいいやつやねん。かわいくてたまらんで」とニコニコ顔で紹介してくれた平田調教師。彼が勝つとき、どんな
アナウンスが流れるのでしょうか?
「
ジュラ紀のモンスターの強襲だー!」とか?いまだかつてない、恐竜に例えられた馬がクラシック戦線をにぎわすことになれば、スポーツ紙には大喜利ばりの面白い見出しが並ぶことになりそうです。
(赤城真理子)
東京スポーツ