ドバイからの帰国組は仕上がりがどうかという不安もあったが、
クリソベリルはその影響をまったく感じさせない強さを見せた。
これといって強力な逃げ馬もなく、逃げたのは
かしわ記念に続いて
ワイドファラオ。隊列が決まってから流れは落ち着き、1000m通過63秒9というのは、ひとつ前のレースで不良から重に変更されたばかりの湿った馬場に加え、この一線級のメンバーを考えると明らかなスローペース。
ストライクイーグルが楽に2番手を追走できたこと、後方の地方馬まで隊列から離れず追走していたことでもそれがわかる。
クリソベリルは外目の3番手。誰にも邪魔されることなく、いつでも動ける絶好位につけた。
レースを動かしたのは、有力馬の中でも臨戦過程に不安がなく1番人気の支持を受けた
オメガパフューム。中団9番手を追走していたが、3コーナー手前で前をとらえにかかった。そしてこれを察知して動いたのが
クリソベリル。手応えには十分余裕があって、うしろから来るラ
イバルを前に出させさえしなければ勝てるという競馬。レースの上り3Fが36秒4のところ、
クリソベリルはメンバー中最速の36秒2。絶好位から寸分のロスもなく立ち回り、他馬に付け入るスキを与えない完勝だった。
オメガパフュームはみずから勝負に行き、持てる力は出し切っての2馬身差。唯一、ロスがあったとすれば4コーナーを回るところでやや外に膨れ、
クリソベリルに差を広げられたところ。ただそれがなくても逆転は難しかった。
クリソベリルにはゴール前余裕があり、
オメガパフュームがぴたりとついていっても、
クリソベリルは来れば来るだけ伸びたと思われる。
チュウワウィザードは、
クリソベリルを前に見る位置を追走。3コーナーからは
オメガパフュームを追いかける形になり、4コーナーでは外に
ケイティブレイブがいてまわりを囲まれるなど、やや窮屈になる場面があった。ただ直線では
オメガパフュームと脚色が一緒になって1馬身1/4差で3着。
昨年の
帝王賞の1、2着馬が2、3着で、その前にいたのが
クリソベリルだった。仮に同じメンバーで同じ条件で何度かやれば、かなりの確率で上位3頭は同じ結果になるのではないかと思える、それぞれが能力を出し切った結果だった。
クリソベリルの
川田将雅騎手は、チャンピオンズCのあと、「まだ成長しながらの段階で結果を出してくれる」と話していて、今回も「身体は減っていたが成長はしている。まだ仕上がりきっているわけではない」と話していた。目いっぱいに仕上げたらどこまで強くなるのか。「上位3頭は能力を出し切った結果」と書いたが、
クリソベリルはまだ能力を出し切っていないのかもしれない。
ペースを落として単騎で逃げることができた
ワイドファラオが4着に粘った。初めての2000mということでは収穫になっただろうし、今後につながる競馬にもなった。上位4着までを4、5歳馬が占めたということでは、ダート中距離路線の今後が楽しみになる。秋にはこのメンバーに、3歳の
カフェファラオ、
デュードヴァンらが加わることになるのだろう。
ノンコノユメは着順こそ5着だったが、8歳ながら素晴らしいレースを見せた。4コーナー10番手から、上り3Fは
クリソベリルに次ぐ36秒4の脚を使って追い上げた。大井2000mの舞台で、上り36秒台前半の脚を使える地方馬はなかなかいない。残り3F手前から先行有力馬に長く脚を使われては、それを差し切るのはほとんど不可能だが、もう少しメンバーが分散すれば、まだまだ
グレードタイトルを狙えそうな能力を見せた。
ケイティブレイブは大外枠ゆえスタート後はゆっくり進んで2コーナーを回ったのが後方2番手。徐々に位置取りを上げ、4コーナーでは
オメガパフュームの直後にいた。さすがに直線は伸びを欠いたが、それでも勝ち馬からは1秒差。若い頃は地方の2000m以上のコースで結果を残してきたが、年を重ねた今はむしろマイル前後のやや忙しい競馬のほうが合うのかもしれない。
ミツバが7着で、ハナ差8着の
ストライクイーグルまで勝ち馬から1秒2差。
ストライクイーグルは、ブリリアントC、
大井記念連勝から臨み、自身の走破タイムは2分6秒5。中央時は準オープン勝ちまでで、オープンでは掲示板がなかった。昨年秋、浦和の
JBCクラシックでも勝った
チュウワウィザードから1秒差で5着に入っていたように、頭打ちになった中央時よりも充実している。
ルヴァンスレーヴは
クリソベリルの直後、5番手あたりを進み、直線を向いたところまでは先団についていったが、その後は反応がなく10着。前半行きたがるような素振りを見せて、直線さっぱりというのは、前走
かしわ記念と同じ。走りたいという意識に、まだ体力がついていっていないのではないか。
地方期待の1頭、
モジアナフレイバーも直線を向くまで好位で我慢していたが13着。ドバイから戻ったあとの調整がうまくいかなかったようだ。