昨年なら
阿寒湖特別を完勝した
ヒシゲッコウ、一昨年なら
藻岩山特別を圧勝した
ミッキーチャームなど、秋3冠の隠し玉たる“上がり馬”が現れるのが例年の札幌シリーズの醍醐味であったが…。いわゆる“裏函”がコ
ロナ禍により閉場となった影響か、そのカテゴリーにおいて極めて不作に終わったのが今年の札幌開催。少々不満の残る7週間だったが、今週の
菊花賞TR
セントライト記念(月曜=21日、中山芝外2200メートル=3着までに
菊花賞優先出走権もその残像を照らすよう。すでに名を売った既成勢力が幅を利かすように見えて仕方ないのは当方だけか。
とはいえ、無敗の2冠馬
コントレイルに挑戦状を叩きつける有資格馬が不在なわけではない。ひそかに期待するのは、
皐月賞で2番人気の支持を集めた
サトノフラッグ。11着に終わったダービー後、陣営からこんな言葉を耳にしたからだ。
「力負けなら納得するけど、レース後すぐ息が入ったところを見るとまるで本気で走っていない。それが気性の問題か、調整の問題なのか。大きな宿題を残したね」
厩舎番頭格の鈴木勝美助手の弁である。豪快マクリで
弥生賞を制した際は“ディープの再来”とまで言わしめた素材。ところが2番人気の
皐月賞は5着、4番人気のダービーは前述の通り。尻すぼみに終わった原因を究明しない限り、秋の飛躍はあり得まい。
「放牧明けで馬はのんびりしているけど、それが逆にいいかもしれない。
弥生賞でこっちも本気になって追い込んでしまった分、馬もヘソを曲げたんだろうね。当時は変に威張って人にちょっかいを出したりイライラしたり…。だから今回はメンタルにもしっかり気を配って調整したつもり」
この鈴木助手の言葉が示す通り、1週前追い切りは南ウッド5ハロン65.0秒を馬なりでマーク。新馬以来のタッグとなる
戸崎圭太騎手を背に気分良さそうに駆け抜けた姿が、精神面のリフレッシュを印象付けた。
「騎手は“新馬当時と比べたら別馬”とベタ褒めだったよ。まだ
ピークじゃないが、追い切ってゴトゴトしていた肩の出も良くなってきたし、
弥生賞のデキに近づいているのは確かだから」と同助手。スパルタからゆとり教育に切り替えた成果はいかに?“隠れ上がり馬”たる走りを見せるようなら、
菊花賞もがぜん面白くなってくるのだが…。
(札幌のスパルタ野郎改め、美浦のゆとり野郎・山村隆司)
東京スポーツ