芙蓉S(土曜=10月3日、中山芝内2000メートル)は、2015年から当距離で行われるようになったオープン特別。
ホープフルSや
皐月賞と同じ舞台なのはもちろん、2歳戦のカテゴリーでは最も早い時期に施行される距離2000メートルの高額条件である。15年以降は最多で10頭と出走頭数は少ない傾向にあるが、昨年の勝ち馬
オーソリティはその後も
青葉賞を制するなど、一定の存在感を示した。レースの価値は今後、高まるのではなかろうか。
15年以降の勝ち馬はすべて新馬勝ち直後の2戦目だったとなると、今年の出走馬も新馬戦の内容を大いに吟味すべきだろう。当欄はその中でも函館での勝ちっぷりが鮮やかだった
アランデルに注目した。というのも勝ちっぷり以上に、そこに至る過程が実に興味深い馬だからだ。
函館の本馬場で行われた新馬戦の1週前追い切りで5ハロン62.8秒の好時計をマーク。これを美浦で伝え聞いた大竹調教師は「予定よりだいぶ速くなってしまって…」と前置きしたうえで、「心身ともにまだまだ成長途上」であることを強調していた。翌週、すなわち
アランデルのデビュー週から函館入りして現地取材を始めた記者はその週末、師の控えめな見立てとは裏腹の新馬戦の勝ちっぷり(一騎打ちの末に下した相手は評判を集めていた
ハープスターの全弟
アークライト)にあぜんとしたものである。
それでもレースで手綱を取った池添は「まだトモに緩さが残る中で結果を出せたことが大きい。期待の大きい馬だし、ゆっくり成長していってくれれば」とコメント。やはり大竹調教師が慎重だったのもうなずける状況下でのデビュー勝ちだったのだ。
池添が“ゆっくり成長”と表現したように、
アランデルは北海道でデビュー勝ちした馬が目標にしやすい
札幌2歳Sへは出走せず、それこそ、ゆっくりと時間をかけて次戦に
芙蓉Sを選択した。となると取材する側の興味は大竹調教師の評価がその間にどう変化したかだ。24日の1週前追い切り(南ウッド6ハロン82.5秒)は3頭併せでシャープな反応。改めて素質の高さは確認できた。それでも「追い切りで時計は刻めていますが、道中で乗り手の指示に反抗するなど、我の強いところが出ています。まだまだのところがありますね。こういう状態の中でどれくらいの競馬ができるかでしょう」(大竹調教師)
むむっ、思ったほど大きく評価が変わっていない感も…。とはいえ、競走馬にとっての2戦目は、その後の競走生活を考えれば、まだまだ序章にすぎない。クラシックを意識しているとしてもそれは同じだろう。大竹調教師の評価はあくまで現段階においてのもの。
アランデルの未来に待っている可能性については、大きな期待を抱かずにはいられない。
(立川敬太)
東京スポーツ