歴史的名牝の快挙により、今週もまた日本の競馬史が書き換えられた。
第162回
天皇賞・秋で、圧倒的1番人気に支持された
アーモンドアイが優勝。これまで名馬たちの前に立ちはだかってきた芝GI8勝の壁を、ついに突き破った。
激しい戦いだった。ゴール前で2着の
フィエールマンと3着の
クロノジェネシスに詰め寄られ、半馬身差の辛勝。この結果につながるポイントは、スタート直後と直線入口にあった。
立ち遅れてリズムに乗れない危険が指摘されていた
アーモンドアイが速いスタートを切った。
フィエールマンと
クロノジェネシスのスタートも悪くなかったが、外から切れ込んできた
キセキと内の
ウインブライトに挟まれ、下げざるを得なくなった。2、3着となった2頭は、ここで位置取りが悪くなったことが最後まで響いた。
それに対して
アーモンドアイはスムーズに最初のコーナーに入り、これら2頭より前の4番手の外目につけた。
そして、直線入口。
アーモンドアイの前がクリアになり、そこから400m以上、前に馬がいない状態で走ることになった。スムーズすぎたと言おうか。できれば前に馬を置いて溜めて、弾ける形にしたかったところだろう。
ところが、
アーモンドアイのすぐ前にいた
ダイワキャグニーは、早めに下がってくる可能性があった。そのため、
アーモンドアイの
クリストフ・ルメールは、早めに抜け出すレースをせざるを得なくなった。内では
ダノンプレミアムがいい手応えで走っていたが、その後ろに持って行くと、馬場の荒れたところを走ることになってしまう。
ルメールとしては、ここを通るしかないというところを走らせた。
溜める局面がなかったぶん、さすがの
アーモンドアイも最後は苦しくなった。そこに
フィエールマンと
クロノジェネシスが付け入る隙ができたわけだが、それぞれ32秒7、32秒8という凄まじい末脚を繰り出しても及ばなかった。
詰め寄られても抜かせなかった
アーモンドアイが、現役最強馬の底力を見せつけた。
(文:島田明宏)