15日、阪神競馬場で
エリザベス女王杯が行われますが、このレースで最も印象に残っている馬を挙げるとすれば、私は
クロコスミアと即答します。17〜19年の3年連続2着は、むしろ歴代勝ち馬以上のインパクト。“ブロンズコレクター”と呼ばれた
ナイスネイチャ超えの偉業は、平成・令和の“
シルバーコレクター”と評していいでしょう。
週中のトレセンで、
クロコスミアを担当していた北添助手とバッタリ。「あれから一年経つんですか。早いですね」。ストレートに聞いてみた。「北添君にとって、エリ女ってどういう存在?」。すると、少し考えた後に「紅白歌合戦ではないけれど“今年も来ましたよ”って感じでしたね(笑)。クロちゃん自身は、年々筋肉がついて成長していました」と教えてくれました。
勝負の世界。G1のタイトルは喉から手が出るほど欲しかっただろうが、「でもね。僕が仕事をする上での目標として“思い出に残る馬が一頭でもつくれたら”という思いがあるんです。
フミノムーン(今年2月の京都障害未勝利戦で予後不良)のように死んでしまった馬でも、ふとした瞬間に、誰かの心によみがえってくれたらうれしいです」と-。競馬ファンと同じ目線に立てる、いかにも彼らしい意見だと思った。
クロコスミアは現在、北海道日高町の
ディアレストクラブで繁殖生活を送っており、そのお腹には
サトノダイヤモンドの子を宿しているそう。「現役時代と同じで、人に対しては“女王様”ぶりを出すところがあるみたいですが、馬たちの中に入ると馴染んでいるみたいですよ(笑)。クロちゃんの子どもで、またエリ女に挑戦できたらうれしいですね」。このコラムを目にしていただいた方々に、気高く燃えた彼女の“魂の走り”を思い出してもらえたら幸いです。
(デイリースポーツ・松浦孝司)
提供:デイリースポーツ