ダート牝馬路線は唯一のJpnIである
JBCレディスクラシックが頂点で、その約1カ月に行われる
クイーン賞は、特に中央のメンバーが手薄になることもめずらしくなく、今回の中央勢は
グレード勝ち馬がいないというメンバーとなった。そうした相手に恵まれたこともあったが、6歳の年末を迎えた牝馬が、また強くなった。
サルサディオーネの逃げ切りは、そんな印象だった。
サルサディオーネのほかに逃げる可能性のある馬は、
ステラモナーク、
ラインカリーナあたりだったが、さすがに無理に競りかけてはこない。
サルサディオーネは9番枠からでもいつものとおり抜群のダッシュを見せ、最初の3Fのラップは11.9-11.4-12.5で35秒8。これに競りかけて行く馬がいればオーバーペースになってしまう。
ステラモナークが2番手で、
パールデュー、
ラインカリーナと先行馬が続いた。
サルサディオーネはその後もきっちり12秒台のラップを刻んで、3コーナーから後続を引き離しにかかった。ここで追ってきたのは
メモリーコウだったが、手応えの差は歴然。
メモリーコウの
古川吉洋騎手はムチを入れても差は詰まらず、直線を向いて追い出された
サルサディオーネの独走となった。最後の1Fだけ13秒2だったが、鞍上の
矢野貴之騎手はビジョンを見ながら、直線伸びてきた
アッシェンプッテルの脚色を測りながらゴール前は手綱を緩めていた。
サルサディオーネは、4月の
マリーンCを勝ったときも同じ55kgだったが、そのときは別定戦で中央勢には57kgや56kgを背負った馬がいた中での勝利。しかし今回は単独のトップハンデ。好位を追走した馬が6着以下に沈み(
パールデューは鼻出血で競走中止)、中団よりうしろを追走していた馬が2-4着に入ったことでも、逃げ馬として圧倒的に強いレースをしたことがわかる。
同じ船橋1800mの
日本テレビ盃は、牡馬の一流馬を相手に最初の3F=33秒8という無謀なペースでの逃げとなって9着。
JBCレディスクラシックは12秒台のラップを刻んでマイペースでの逃げが叶ったが、牝馬ダート
グレード路線で常に上位を争う馬たちに直後で突かれたことで直線では余力がなくなって7着。そうした厳しい相手との厳しいレースを経験したことで、6歳の牝馬がさらに充実を見せたといえるだろう。
サルサディオーネのような何が何でもという逃げ馬は、ほかに同型がいるかどうかでも結果を左右されるが、船橋コースはこれで6戦して3勝、2着2回。一度の惨敗は前述の通り牡馬一線級相手の乱ペースだから例外と考えてよい。川崎でも2着3着の好走があり、対して大井では3度走って今年の
JBCレディスクラシックでの7着が最高着順。中央での4勝も中京、東京、新潟で挙げていたように、やはり左回りで、さらに船橋のゆったりしたコースが合うということだろう。
勝ち馬以外で見せ場があったのは、2着の
アッシェンプッテルだけ。縦長の中団よりうしろを追走して3コーナー手前からのロングスパート。上り3Fが37秒5で、
サルサディオーネの上り(=レースの上り)38秒6より速い上りを使ったのはこの馬だけ。さすがに中央のダートオープンで牡馬と好勝負をしていただけのことはある。ただ
サルサディオーネの強さが際立っていただけに、評価はまだ難しい。
そこから8馬身も離れて3、4着に、軽ハンデの伏兵
サルサレイア、アタマ差で
マルカンセンサーが入った。
サルサディオーネの2歳下の半妹
サルサレイアは、
アッシェンプッテルのうしろからそれを追いかけるように進出しての3着。惜しくも4着ではあったが、
マルカンセンサーはうまく流れに乗った。スタート後の直線ではスピードに乗って3番手の
パールデューに並びかけようかという勢いだったが、位置取りを下げて向正面では
アッシェンプッテルの前の中団。ペースが緩まなかった中盤で脚を溜めたことで、最後の踏ん張りにつながった。
マルカンセンサーは昨年の
TCK女王盃でも勝ち馬から差があっての2着という経験があった。
5着の
メモリーコウは休み明けもあっただろうが、強い逃げ馬を負かしに行っての完敗だった。