アーモンドアイが見事な有終走を飾ってから、わずか2週間後に迎える第72回阪神JF(13日=阪神芝外1600メートル)で、我々は新たな名牝誕生の鼓動を感じることになるのか!? 多くの名馬たちを管理してきた
国枝栄調教師(65)から飛び出した「
アーモンドアイ超え」。単なるリップサービスか、結構マジなのか…。無傷の2連勝で2歳女王決定戦に乗り込む
サトノレイナスの可能性を探った。
ジャパンCで自身が持つ芝GI最多勝利記録を「9」に伸ばした
アーモンドアイが3日午前、美浦トレセンからノーザン
ファーム天栄(福島県)に向けて旅立った。翌朝の南スタンド4階で国枝調教師は多くの管理馬の調教をチェックしながら「気が楽にはなったよな。あれだけの馬だったから…」とポツリ。その表情は実に穏やかなものだった。
希代の名牝が去っても時計の針は変わることなく進む。余韻に浸る時間はほんの一瞬。レースは毎週行われているのだ。まして次から次へと有力馬が出てくるのが今の国枝厩舎。阪神JFに送り出す
サトノレイナスも、有力馬の一角どころか、「
ニューヒロイン」を狙える立ち位置にいる、2戦2勝の
ディープインパクト産駒だ。
国枝厩舎といえば、
アーモンドアイだけでなく、
アパパネも在籍していたことで知られる。この後の牝馬3冠馬たちは、
アパパネが2歳7月のデビュー戦で3着、
アーモンドアイもまた8月のデビュー戦で2着に敗れている。対して
サトノレイナスは6月のデビュー戦で見事に勝利。2頭の3冠牝馬と比べてデビュー時期がさらに早く、しかも結果を出していることは注目に値しようか。
ちなみに現3歳の全兄
サトノフラッグもまた10月のデビュー戦で6着に敗れた後、未勝利戦から
弥生賞まで3連勝を飾っている。そのあたりも踏まえたうえで、
サトノレイナスの可能性について国枝調教師に話をうかがうと…。
「フラッグは牡馬なのもあってか、入厩してすぐはピリッとしなかったんだけど、レイナスは早い時期から気持ちが入っていたし、それでいて馬体も立派。早い段階から(素質は)上だったよね。実際、北海道にいる時から牧場でも評判になっていた。基本的に優秀な馬は早い時期から目を引くものなんだ」
日本競馬の中枢をなすノーザン
ファームの生産馬となると、数多くの将来有望な馬たちが集う中にあっての評価を意味する。
サトノレイナスの資質の高さを示す十分な根拠になり得るだろう。
そして新馬→
サフラン賞(1勝クラス)と1600メートルで順調に
ステップアップしてきた
サトノレイナスにとって、同距離の阪神JFへの出走は青写真通りと思えるのだが、国枝調教師からは意外な答えが返ってきた。
「個人的には(1800メートルの)東スポ杯を使いたかったんだ。馬の格好を見ると2000メートルは欲しいからね。ただ、オーナー(サ
トミホースカンパニー)が牝馬のGIをまだ勝っていないこともあって、まずはここへ向かうことに。牡馬と一緒の路線に行きたい気持ちもあったんだけどね」
アパパネや
アーモンドアイに比べても四肢が長くスラッと見せる体形。トレーナーの中にはマイルよりも“長い距離で”の思いが強いのだ。さらには「冗談みたいな話になるんだけど」と前置きしたうえで、壮大なプランが胸中にあることを明かしてくれた。
「牝馬で、しかも無敗で
皐月賞からダービー、さらには(3歳秋での)
凱旋門賞(を勝つ)ってことになれば、あの馬を超えるわけだよな。まあ、
アーモンドアイだって出ていればダービーを勝っていただろう。最近は世界的に見てもトップクラスは牝馬が強いからな」
もちろん、現実はまだ新馬→1勝クラスを制しただけの馬。あくまで“夢物語”ではあるのだが…。“
アーモンドアイ超え”の有資格馬であることだけは間違いない。今週末はそんな可能性に満ちた
サトノレイナスの走りをじっくりと堪能したい。
(立川敬太)
東京スポーツ