まず、
ウインブライトの連覇がかかる
香港カップ。香港4レース(ス
プリント、マイル、カップ、ヴァーズ)のなかで日本馬が最も勝利しており、それだけにディフェンディングチャンピオンへの期待は大きい。
過去3年のレース傾向を見ると、先行ないし逃げた馬が先頭でゴール板を駆け抜けている。昨年の
ウインブライトも道中を3、4番手あたりで先行すると、残り300mを過ぎたあたりから先頭に立ち、迫りくる後続馬をしのいで粘り切った。
昨年は休み明け3戦してからの参戦だったが、今年は叩き2戦目で余力十分。2019年に
クイーンエリザベス2世カップと
香港カップを同一年に制した史上4頭目の6歳馬が、引退レースで有終の美を飾れるか、注目が集まる。
一方、
ダノンプレミアムは、4月の豪GI
クイーンエリザベスSで最後の直線に入るところではいったん先頭に並び、本命の期待に応えるかと思われるも、海外初挑戦が影響したかラストの伸びを欠き3着に沈んだ。海外挑戦2戦目のここでは、
オーストラリアで得た経験を武器に上位争いの一角に食い込みたい。
昨年の
香港マイルから
香港カップに舞台を移しての挑戦となる
ノームコアは、200m長い2200mのGI
エリザベス女王杯で連に絡んでおらず、距離が微妙なところだろう。
日本馬以外で注目したいのが香港のフローレ。
ステップレースのGIIジョッキーク
ラブカップは、道中3番手から楽に追走すると抜群の手ごたえで直線に入り、ラスト200mからは並びかけていた2018年
香港ヴァーズ優勝馬で1番人気の
エグザルタントを置き去りにして楽勝した。本番では、日本勢の前に高い壁として立ちはだかるだろう。
レーティング121でトップを分け合うスカレティと
マジカルは、10月のGI英チャンピオンステークスで対戦して、先行したスカレティが2着で、後ろから追走した3着の
マジカルに先着した。先行馬有利の
香港カップでは、スカレティのほうを優位にとりたい。
香港マイルには大本命が存在。それが
ゴールデンシックスティだ。史上2頭目の香港4歳クラシック3冠馬はGI勝ちこそまだないが、14戦13勝で目下10連勝中。前哨戦のGIIジョッキークラブマイルを快勝して波に乗っているだけに、ここがGI勝利の初舞台となっても驚けない。
最近10年間の勝ち馬の年齢に目を向けると、最多勝が5歳馬の4勝。
ゴールデンシックスティを含む5頭が出走する今年の5歳馬のなかで注目したいのが、
マイティジャイアント。初の重賞挑戦となった前走GIIジョッキークラブマイルでは4着に終わったが、ニュージーランド産馬は過去10年で5勝と本レースと相性抜群。人気は集めなさそうだが、相手候補に取り上げてもいいほどだ。
予想のカギを握るのが、4年連続出走の
ビューティージェネレーションの取捨。2017年から同レースを連覇したマイル王もすでに8歳。前哨戦のGIIシャティントロフィーでは
ゴールデンシックスティらの後塵を拝して6着に終わり、3着以内を外したのは19戦ぶり。勝ち馬とは10
ポンド(4.536キロ)の斤量差はあれど、世代交代の波に押されてきた感はある。
ブリーダーズカップマイルで、殿人気で穴をあけた
オーダーオブオーストラリア。3歳馬にとって
香港マイルは過去にわずか2勝と鬼門だけに、ここでは軽視してもいいだろう。
昨年の覇者
アドマイヤマーズは、2019年が休み明け2戦目だった一方で、今年のローテーションは休養明け3戦目。しかも、前走が
マイルCSと厳しいレースだっただけに、馬体が回復しているかが不安材料。昨年の再現は厳しいといわざるを得ないだろう。
2014年の
エアロヴェロシティから昨年の
ビートザクロックまで香港馬が連勝しているように、地元馬の独壇場と化しているのが
香港スプリントだ。今年はコ
ロナウイルス感染症拡大の影響で外国からの参戦は日本馬2頭のみだが、香港勢は2019年の2着馬
ホットキングプローン、
オーストラリアのス
プリントGI制覇後に香港へ移籍したクラシックレジェンドなど強力馬が待ち構える。
前走でGIIジョッキークラブス
プリントを使った馬が6年連続で本番を勝利しているが、その間、ジョッキークラブス
プリントと
香港スプリントを連勝したのは2017年の
ミスタースタニングのみ。今年のジョッキークラブス
プリントを制した
ホットキングプローンにとっては不吉なデータだ。
となると、同レース2着のコンピューター
パッチ、同3着の
ラタンが狙い目か。コンピューター
パッチは重賞勝ちこそまだないが、前哨戦では
ホットキングプローンを抑えて1番人気の支持を得た期待馬。
ラタンは出走馬10頭中最低人気で馬券に絡んだだけに、本番でも穴党は注目したい。
香港移籍後の初戦をGIに選んだクラシックレジェンドは、10月のGIジ・エベレストを豪快に差し切った。先行馬有利の
香港スプリントでは、一級品の末脚が通用するか未知数だけに注目したいところだ。
昨年の
スプリンターズS優勝馬
タワーオブロンドンは、今年は爪の状態が悪く
スプリンターズSを見送っただけに、ハイレベルな香港のス
プリント戦でいきなり結果を出すのは難しそうだ。
一方、
ダノンスマッシュは
スプリンターズS経由での挑戦は去年と同じローテーション。ス
プリント戦の実績では
タワーオブロンドンに分があるが、順調にきている
ダノンスマッシュのほうがチャンスは大きいか。
(文=一野洋)