それにしても、すごい一年になったものだ。競馬界にとって2020年はまさに記録ずくめ。
コントレイル、
デアリングタクトと牡牝ともに無敗の3冠馬が誕生し、
ジャパンCではその2頭を従え
アーモンドアイが芝GI9勝を達成。さらには先週の阪神JFで
ソダシが史上初の白毛馬によるGI制覇、海の向こうでも
ダノンスマッシュが
香港スプリントを、
ノームコアが
香港カップを制してみせた。
さすがにもう、おなかいっぱい?いやいや、今週もまた新たなドラマ誕生の予感が…。
朝日杯FS(日曜=20日、阪神芝外1600メートル)にエントリーしている
レッドベルオーブの全兄
レッドベルジュールといえば昨年、新馬戦→
デイリー杯2歳S連勝と高い素質を誇示しながらも、ケガやノド不安の影響により、わずか3戦でターフを去った。そのラストランとなったのが
朝日杯FS(10着)。
そう、弟
レッドベルオーブがここで
ビッグタイトルを獲得し、兄
レッドベルジュールの無念を晴らせるか――。まさに注目の一番となるのだ。
この兄弟ストーリーに筋書きがあるとすれば、
レッドベルオーブの前走=デイリー杯はその序章と言えるだろう。
「直線で内を突く同じような勝ち方だったよな。
ベルジュールはノドのことなどもあって残念なことになったが、このきょうだいはみんな走る。
ベルオーブはレコードで走破したわけだし、モノとしては間違いないよ」
こう話すのは両馬の管理トレーナーである藤原英調教師。前哨戦のデイリー杯で兄弟制覇を成し遂げた期待の素質馬とともに、2年越しのリベンジに挑む。
「前走に関しては勝つことが重要だった。まだ馬の絶対能力の高さに体が追いついていないのが現状だが、それはいいことでもある。動き過ぎるところだったり、折り合い面だったりの課題があれば、これから直していけるわけだから」
まだ粗削りながら、重賞を勝てるだけの
ハイポテンシャル。これに名門厩舎が誇る百戦錬磨の究極仕上げが加われば…。まさに期待は膨らむばかりである。
一方でデイリー杯前の未勝利戦も含め、2戦続けてレコードで走った反動が気になる方もいることだろう。実際、
レッドベルオーブはデビューから478→470→468キロと馬体を減らし続けている。
この点については指揮官も「そこはいかんよな。今回はプラスか、維持でないと」と気にしていた時もあったのだが、現在は480キロ前後までボリュームアップしたことでトーンも自然に上がってきた。
「反動?人間が判断できるところでは大丈夫。まだ2歳だし、まずは体調を良くして健康体で臨むこと。それが何より重要なんだよな」
大一番へ向けての調整は青写真通りに着々と進んでいる。
兄
レッドベルジュールは素質の高さと血統の良さを買われ、
アロースタッドで種牡馬入りとなったが、仮に現役を続けていたとしたなら…。
そう、弟
レッドベルオーブの走りに兄の可能性も見いだされ、その価値を高めることもできるのだ。志半ばで現役を退いた兄の分まで…。今週はそんな「血のドラマ」に酔いしれてほしい。
(栗東の馼王野郎・西谷哲生)
東京スポーツ