2020年最後の2歳最高峰決戦・第37回
ホープフルS(26日=中山芝内2000メートル)を
ターゲットにした「POGマル秘週報」は、東西記者からの豪華2本立てでお届けする。
★関東(立川敬太)=東からは
オーソクレースを取り上げる。札幌のデビュー戦、続くアイビーSともに最速上がりを駆使しての差し切り。しかも1、2回札幌開催の芝1800メートル戦で33秒台の上がりを使ったのは古馬を含めても
オーソクレースの他に3頭だけ。
そしてアイビーS2着
ラーゴムは続く
京都2歳Sでも2着、4着
アドマイヤハダルは
エリカ賞勝ちと、時間の経過が
オーソクレースの2戦の価値をさらに高めている。
一方で2戦ともスタートでは出遅れ。まだ幼さを残し、課題が山積みにも映る現状なのだが、久保田調教師はそう深刻には捉えていない。
「ゲートも出るには出ているんですよ。ただ、他のことに気を取られるというか、周りが気になって(出遅れて)しまうんですね。でも、だんだんと競馬を覚えていけば解消すると思っていますから、特に練習はしていません。だいぶ走ることにも前向きになってきましたから。むしろ、未知な部分が多い中で結果を出せていることを評価しています」
無理に馬を追い込むようなことはせず、ゆっくりと肉体と精神が熟すのを待っている段階。そんな中での連勝が「器」の大きさを示していると言えようか。
さらに忘れてならないのが
マリアライトの初仔という血統背景だ。母は3歳1月の遅めのデビューとあってクラシックとは無縁。4歳秋の
エリザベス女王杯が初タイトル奪取。そして翌年の
宝塚記念で
ドゥラメンテ、
キタサンブラックらを抑えて優勝した「おくての名牝」だった。
「
マリアライトは新馬戦こそ強かったけど、馬体の成長が追いつかず、出世に時間がかかりましたからね。
オーソクレースにしても、まだまだの状態。決して2歳の早い時期からって感じの馬ではないんです。今はまだ能力だけで走っている段階ですから」
あらゆる面でまだ成長段階では、2歳最高峰決戦での勝ち負けはやはり難しい?
「もちろん、来年に向けてが一番なんですけどね。ここ2戦で戦ってきた相手よりもう一段上になって、どんなパフォーマンスを見せてくれるのか。強い相手に対して、本気で走った時にどうなるのかって楽しみはあります。もしここもクリアしてくれるようなら、来年はさらに楽しみになりますからね」
「未完の大器」
オーソクレースの真の“器”の大きさを知らしめる瞬間は早々に訪れるかもしれない。
★関西(難波田忠雄)=2017年にGIへ昇格して今年が4回目となる
ホープフルS。昨年の勝ち馬
コントレイルは無敗でクラシック3冠を達成、一昨年の
サートゥルナーリアも
皐月賞を制するなど、
朝日杯FSよりもクラシックへの“直結度”は高い。各陣営がエース級を投入してくる見どころの多い一戦で今年、注目したいのは昇格元年の覇者
タイムフライヤーや、
サートゥルナーリアと同じく“縁起のいい”萩Sを快勝した
シュヴァリエローズだ。
清水久厩舎といえば、希代の名馬
キタサンブラックの「坂路3本乗り」で有名だろう。とにかくビシビシ鍛えて強くするのがモットー。
シュヴァリエローズもその例に漏れず、デビュー当初から「週2本の追い切り」をこなしてきた。
「デビュー前はさすがにピリピリするところがあったけど、今は落ち着きが出てきましたね」
担当の久保助手がこう振り返るように、入厩当初は週2本のハードトレに苦しがるところを見せてきたが、今ではその時期を乗り越え、厳しい調教メニューを難なくこなせるほどの心身の成長を遂げている。
デビュー2戦目の
新潟2歳Sは出遅れたうえに、馬場の悪い最内を通った影響もあって5着に敗れたが、萩Sでは好スタートからスッと番手へつけ、最後まで長くいい脚を使って押し切ったように、ハード調教の効果が徐々に表れつつある。
「
新潟2歳Sの前は夏バテ気味でピリッとしなかったし、新馬戦で勝っているとはいえ、マイルも忙しい感じがあった。今回はコーナー4つの競馬になりますけど、今は調教でも手前をしっかり替えてくれて、乗りづらさはまったくないので大丈夫。萩Sはスタートも速かったですし、長くいい脚を使えるのがこの馬の最大の武器。持ち味を生かしやすい舞台だと思いますよ」と久保助手はコース替わりは歓迎といった口ぶりだ。
さすがにGI7勝を挙げた
キタサンブラック級の超ハード調教はまだ課してはいない。それでも
シュヴァリエローズが課されてきた調教は並の2歳馬には耐えられないようなメニュー。それを乗り越えたとなれば、萩Sからわずか2か月弱とはいえ、相当な心身の進化が見込める。
来年のクラシック戦線を見据える意味でも、
シュヴァリエローズがどれだけパフォーマンスを上げてくるのかに注目してほしい。
東京スポーツ