2020年、世界全体を覆い尽くした未曽有のコ
ロナウイルス禍の中、
中央競馬はこれに負けじと大奮闘。
コントレイル&
デアリングタクトが揃って無敗の3冠馬に輝き、
アーモンドアイが芝GI史上最多勝を達成。そして
ジャパンカップではこの3頭が激突し、空前のドリームレース実現と日本中の話題をさらった。なぜコ
ロナ苦境のもとで、
中央競馬がここまで頑張れたのか?智将・中村均本紙専属評論家が令和2年に起こった“
JRAの奇跡”を分析し、合わせて今の競馬界を取り巻く「新キーワード」を提唱する。
コ
ロナ禍の暗たんとしたムードが消えることがなかった2020年ですが、
中央競馬は売り上げを大きく落とすことなく、前年比100%超えを記録したGI競走も少なくありませんでした。なぜ
JRAがここまで“快走”できたのか?その一番の理由は春に新型コ
ロナウイルスが蔓延してきた際に、すぐさま無観客開催を打ち出したことです。当時、開催中止という選択肢もあったはず。それを無観客という、リスクを最小限にしたうえでの開催に踏み切った。これが大きい。もし一時的とはいえ開催を中止していれば、馬主経済は厳しくなり、調教師や騎手も収入がゼロに。競馬に関わるすべての人にとって大打撃となっていました。
それを回避し、ここまで
クラスターも出さずに開催を続けてきた
JRAの決断は2020年の「MVP」にふさわしいものだったのではないでしょうか。秋に多くのスターホースが明るい話題を振りまきましたが、私にはこれが、コ
ロナに負けず競馬を続けてきたことに対する、何か競馬の神様からのプレゼントのように思えるのです。
もちろん、開催を支えたファンも「MVP」です。以前、私はコ
ロナ時代における競馬が、「自粛」&「社会貢献」&「楽しみ」という「3効」をもたらすと説きましたが、まさにこの3つの効果は絶大でした。
外出を控えながら馬券を楽しみ、なおかつ、それが国庫納付金となって国に貢献できる。このコ
ロナ禍において、果たしてこんなに素晴らしい趣味が他にあるでしょうか?ある意味、未曽有の厄災が日本の競馬が持つ底力を再認識させてくれた、そう思っています。
競馬の中身に関して言えば、とにかく牝馬が強かった。最近はずっと言われていることですが、さらに攻勢を増して牡牝混合GIは牝馬が勝つのが当たり前になってきました。平成に入ったころ、それまで弱かった関西馬が、坂路の効果もあって強くなり、以降「西高東低」と言われて久しいですが、競走馬の世界ではこれに代わるキーワード「牝高牡低」が出来上がっているようです。「西高東低」がすぐさま逆転とならなかったように、「牝高牡低」もしばらく続くのではとにらんでいます。
最強牝馬
アーモンドアイは引退しましたが、私の見立てでは同じ牝馬の
グランアレグリアはこと切れ味に関してはアーモンド以上。この馬がおそらく距離を延ばしてくる2021年は
コントレイル、
デアリングタクトとの胸躍る「新・3強対決」が待っているかもしれません。2021年も競馬界は話題豊富な年となるでしょう。
☆中村均(なかむら・ひとし)=1948年9月13日生まれ、京都府出身。麻布大学獣医学部卒業後、71年に父親の中村覚之助厩舎の厩務員となる。77年に28歳の若さで調教師免許を取得、厩舎開業後は
トウカイローマン(84年
オークス)、
マイネルマックス(96年朝日杯3歳S)、
ビートブラック(2012年
天皇賞・春)でGI制覇を達成。また04年から10年まで日本調教師会の会長を務める。20年には文部科学省からプロスポーツの発展に貢献したとして「スポーツ功労者」顕彰、政府から「旭日小綬章」受章。好きな戦国武将は石田三成。
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