雨は上がっていたが、不良のコンディションのもと、第62回
アメリカジョッキークラブカップのゲートが開いた。
大方の予想どおり、16番枠から出た
ジェネラーレウーノが正面スタンド前でハナに立った。同馬を含め、外枠に入った先行馬が次々と内に切れ込んでくる。
クリストフ・ルメールが騎乗する
アリストテレスも速いスタートを切ったが、外枠の馬たちを先に行かせながら手綱を引き、馬群のなかで折り合いをつけた。
2コーナーを回り、向正面に入ったところでは、先頭から7馬身ほど離れた6番手につけていた。
その2馬身ほど後ろの外に
ヴェルトライゼンデがいる。昨年の
菊花賞では
コントレイルを終始マークして苦しめた
アリストテレスだったが、1番人気に支持された今回は逆に、他馬にマークされる立場になった。
1000m通過は1分3秒3。馬群が縦長になり、ルメールの手が軽く動いていたところを見ると、馬場状態を考慮すると、平均ペースかやや速い流れだったのか。
3コーナーで
アリストテレスが動き出すと、外から
ヴェルトライゼンデが被せるように進出してきた。そのさらに外から
サトノフラッグもマクるように押し上げてくる。
アリストテレスが内の
ステイフーリッシュに並びかけながら4コーナーを回る。その外から
ヴェルトライゼンデが併せてきて、やや遅れて大外から
サトノフラッグもスパートをかける。
「
アリストテレスの手応えはとてもよく、だんだんペースアップしました。4コーナーで勝つ自信がありました」
そう話したルメールの叱咤に応え、
アリストテレスは外に
ヴェルトライゼンデを従えたまま直線に入り、ス
トライドを伸ばす。
ラスト200m付近で先頭に立ち、ルメールの右ステッキが入るとさらに加速。最後まで伸び切り、2着の
ヴェルトライゼンデに半馬身差をつけてゴールを駆け抜けた。昨年9月の
小牧特別以来の通算4勝目が、嬉しい重賞初勝利となった。
「この馬場で、直線はすごく長かった。トップコンディションではないのにGIIを勝った。状態がよくなれば、GIを勝てます」とルメール。
3、4コーナーで外から
ヴェルトライゼンデに来られたときに一歩も引かず、横綱相撲で押し切った。極悪馬場をモノともせず、トップコンディションではなかったのに、この強さ。
コントレイルとの再戦が、さらに楽しみになった。
(文:島田明宏)