美浦には南北2か所の調教場が設置されている。トレセンが開場した1978年当時は2か所の調教場に明白な使用格差はなく、むしろ北馬場のほうが優勢だったとも聞くが…。
92年から南馬場でウッドチップコースの運用が開始され、さらに93年には南馬場に併設される形で、やはり走路面がウッドの坂路が完成。現在に続く“南高北低”の流れはこの時期に決定付けられた。ちなみに先週水曜(27日)の追い切り頭数を比較すると、南ウッドの439頭に対して、北C(ダート)は馬場(稍重)が悪かったこともあり、33頭にとどまった。
とはいえ、普段は南ウッドや坂路をメインの調教コースとしている馬が北馬場で追い切られるケースもある。時として追い切り頭数の少ない“閑散ぶり”こそが存在価値となるからだ。
馬が多い南馬場では調整が難しいタイプでも、北馬場で落ち着きを取り戻すことがあるし、仮に馬場入りをゴネたり、直線でヨレることがあっても、他厩舎の調教に迷惑をかけるリスクは少ない。さらには実際のレースでやらかした“前科持ち”が実戦復帰するには、北Cでの平地調教再審査をパスせねばならない。
水曜の馬場開門から4時間15分後。さらに15分後に開始される障害試験を待つ組以外は“馬影”のない北馬場で平地調教再審査は行われる。1月20日には
ランドオブリバティが受験して見事にクリア。今週の
きさらぎ賞(7日、中京芝2000メートル)出走への第一関門を突破した。その1週前に北Cで行った“予習”同様に、馬場の真ん中を真っすぐに伸びた姿を見る限り、前走の
ホープフルSの悪夢(4角逸走→競走中止)を繰り返すとは考えにくい。
「もちろん、調整面での難しさはありましたよ。牧場での馴致から始まって、トレセンに入ってからも、1頭だけで調教する場面はそうそうありませんから。それでも本番と同じ騎手(三浦)、同じハミ(ジェーンビット)でしっかりと走れていました。ほかのレースで復帰するプランもありましたが、中京の2000メートルはテンからペースが流れやすい分、競馬もしやすいでしょうから」(鹿戸調教師)
押し出されてハナに立ったことも逸走の一因と考えられており、好位からのレースで平常心が保てれば、さっそくのリベンジも期待できそうだ。
一方、次週の
クイーンC(東京芝1600メートル)には平地調教再審査の“先輩”である
リフレイムがスタンバイ。外ラチ沿いまでヨレながら押し切った新馬戦で再審査を課せられて以降の追い切りは常に北C(平日は右回り)を選択してきたのだが…。28日に約半年ぶりに左回りの南ウッドで追い切られ、ノープロブレムをアピールした。
「もちろん、口向きのことは頭の片隅には置いてありますが、もう大丈夫とみています。だからこそ、ウッドで追い切りました。当週の内容はまだ決めていませんが、
テンションを上げずに平常心で臨めれば」と黒岩調教師。こちらも調教同様の“大人の走り”で重賞初制覇をもくろんでいる。
(美浦の一撃野郎・山河浩)
東京スポーツ