先週の当コラムで山村記者が
ダイヤモンドSに出走予定の
サンアップルトンを取り上げていた。熟読した末に、記者も激走を確信。大勝負を予定していたのだが、3分の2の抽選に外れる不運で、まさかの除外に…。そこで諦めればよかったのだが、メインまでに積み重なっていった負け分を取り返す一心で熱くなり、
サンアップルトン不在の
ダイヤモンドSで大勝負して、全治数か月の重傷を負ってしまった。
傷心の中、今週の特別登録に目を通すと、
中山記念(28日=芝内1800メートル)に
サンアップルトンの名が。3400メートルのレースを使うはずだった馬が、まさか1マイルも短くなる1800メートルに登録してくるとは…。これはもう直接取材で真意を確かめるほかない。
現場歴の浅い記者は、中野栄治調教師とお話しさせていただく機会がこれまでなかったが、あのシーンはもちろん、鮮明に記憶に残っている。師の騎手時代の1990年
日本ダービー。
アイネスフウジンとのコンビで華麗に逃げ切り、
JRA入場者レコードとなる19万6517人の「ナカノコール」に包まれたウイニングランの感動シーンを。そんなレジェンドのような先生が、面識のない記者の突然の取材に応じてくれるのか…。高揚感と不安が交錯する中、厩舎を訪ねると和やかな表情とともに意外な答えが返ってきた。
「正直、先々週の時点では状態がひと息で出否を迷っていたくらい。先週の追い切りでようやく上向いてきたので投票したけど、それでも良化途上の段階だった。今週はさらに雰囲気が良くなっているし、結果的に1週延びたのは、すごく良かったよ」
ちなみに山村記者に話していた“何千頭に一頭の感性の鋭さ”について改めて尋ねると、「馬がジョッキーの気持ちをスッと感じ取り、即座に反応できる。こんなことができる馬は俺が出会った中では
ドロッポロード以来だよ」と、80〜81年に
クモハタ記念→
金杯→
東京新聞杯を3連勝しながら、ケガでターフを去った「幻の名馬」を引き合いに出すほど。40年の時を経ているわけだから、確かに何千頭に一頭というのもうなずける。
最終追い切り後、師は「先週よりもいい動きだったし、やっぱり除外で延びたのはプラスだった」と状態面に改めて太鼓判。さらに「メンコを取ってやったらかえって集中力が出ていたし、耳の使い方が良くなった」と。この耳の使い方こそ、ジョッキーの気持ちを即座に察する感性の鋭さにつながっているのでは。
1800メートルへの距離短縮にも「ペースは流れるだろうけど、あの感性の鋭さがあれば、対応は可能だと思う。もっと大きな舞台に向けて賞金を加算したいね」と最後まで
ポジティブな師の言葉に乗って、記者も先週のリベンジといきたい。
(美浦の追跡野郎・松井中央)
東京スポーツ