阪神JFで初のマイル戦に挑んだ
メイケイエールは、不利と思われた大外枠から外を回る形でも、内をさばいてきた勝ち馬
ソダシの0秒2差4着に健闘した。それまでの新馬→小倉2歳S→
ファンタジーS3連勝の実績と合わせ、牝馬トップクラスの能力を有するのは間違いないのだが…。
一方で何かとその危うさを指摘されがち。例えば現時点で
桜花賞を勝てるかと問えば、懐疑的な見方が大半を占めるのではないか。実際、
ファンタジーSをレコードで快勝した直後ですら、優勝騎手インタビューを受けた
武豊は「今のままで距離が延びるのは…。明確な課題があるので、問題はそこですね」と。制御しきれずにガツンと行きたがってしまうようでは、全幅の信頼が置きづらいのも仕方のないことなのかも…。
折り合い面の課題について管理する
武英智調教師は「何か悪さをしようとか、反抗的になっているわけではなくて、夢中になって一生懸命走っているだけなんですよね。先を見据えた場合、このままでいいとは思っていません。これから競馬を覚えていく必要はありますよね」としっかり向き合っていく姿勢を見せる。もちろん、見据える先は
桜花賞なのだろう。
「まずは
桜花賞でちゃんと走れるようにすることが大事ですけど…。そこで
メイケイエールの競走生活が終わるわけではありません。さらに先のことまで考えても、今のままの競馬を続けていればいいとはならない。控える競馬がもっとスムーズにできるようになれば、もっとはじけそうなイメージもあるんです。そういった可能性を探っていかなければ」
阪神JFから十分に間隔を空けて、今年の始動戦に選択したのはGII
チューリップ賞(6日=阪神芝外1600メートル)。
桜花賞の王道路線だ。これは課題の折り合いを修正できたからこその自信の選択なのか?
「普段は落ち着いていて、雰囲気はすごくいいんです。ただ、だからといってレースで折り合えるかとなると…。レースを経験しながらでしか、できるようにならないこともありますからね。だから調教でやることはこれまでと変わりなく。
小倉2歳Sや阪神JFの前は、間隔が短かったこともあって馬具を工夫するなど、いろいろ詰め込む必要もあったんですが、今回は長いスパンの中だからこそ、あえて特に変化をつけないで、いつも通りに調整しています。馬の雰囲気を見ても、気持ちの面ではいい方に向かっていると思いますね」
あくまで自然体での調整を強調する。ならば距離的にもメンバー的にもより勝機を見いだせる翌週のGII
フィリーズレビュー(14日=阪神芝内1400メートル)を選択する手もあったのでは…。
「僕の中では
チューリップ賞の一択でした。もちろん、オーナーサイドや(武)豊さんにも了承してもらったことで、ここからとなったんですけどね。本番と同じ舞台で走らないことには次にはつながらない。
桜花賞を勝ちにいく気持ちであれば、
チューリップ賞でどういった競馬ができるかを確かめる必要があると思うんです」
桜花賞に懸ける熱い思いと前哨戦に求める意義を明かしてくれた。
「スタートはゆっくりと出して、何なら道中はポツンと最後方でもいいと考えているんです。普段は豊さんに指示をすることなんてないんですが、今回ばかりは後ろからの競馬をオーダーしようかと思いますし、豊さんも同じ考えでいてくれると思うんです」
武英智師にとって
武豊はジョッキー時代からの大先輩であり、同じ業界のトップを走り続ける血縁…いわば“憧れのお兄さん”。強い絆で結ばれている。
「勝ちにいく競馬をしない」と表現してしまえば聞こえは悪いかもしれない。しかし、そうすることが本番につながる、明快な意図があってのものだ。とはいえ「それでも勝てるとは思ってますよ」と最後の最後に自信をのぞかせた
武英智調教師。そこには
武豊=
メイケイエールへの熱い信頼が込められている。
(栗東のバーン野郎・石川吉行)
東京スポーツ